プライマリーナースとは?
医療においてプライマリーケアは、米国国立科学アカデミーで「患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービス」と定義されています。
プライマリーナースはメリットが大きい?
一方、プライマリーナースとは患者に対し入院時から退院まで一人の看護師が担当する看護方式(パートナーシップ・ナーシング・システム)を行う看護師を表す言葉です。
受け持ち制介護方式とも呼ばれる?
パートナーシップ・ナーシング・システムは、一般的には略語でプライマリーナーシングと呼ばれていますが、看護計画の立案から入院時のサポート、看護や入院指導・退院指導だけでなく患者が退院した後の看護評価まですべて行うため受け持ち制介護方式とも呼ばれています。
プライマリーナースは基本的に看護師のスキルや担当制によって選定されますが、入院当初からサポートすることで患者への責任感を持って接するようになるだけでなく、主体的に一人の個人として患者への理解を深めることでよりきめ細かな看護を行えるようになります。
責任をもって看護師としての能力の向上や仕事への充足感を得やすい看護方式だともいわれていますが、患者にとっても看護師と信頼関係を築くことで安心して治療に専念できるなどメリットが大きい看護方式です。
チームナーシングとは?
一人の患者を受け持つプライマリーナーシングに対し、看護師や看護助手など複数のスタッフで看護を行うことをチームナーシングといいます。
チームナーシングには固定チームナーシングとパートナーシップナーシングがありますが、病院によってはどちらか一方を採用していたり、2つの看護方式を組み合わせたりと臨機応変な対応を行うこともできる看護方式です。
固定チームナーシングとは
固定チームナーシングは、チーム内のリーダーやメンバーを年単位で固定化し看護を行っていきます。
主にリーダーはチーム内の業務が円滑に行われるよう業務を割り振り、メンバーのフォローや新人ナースの教育を行う役割を持っています。
看護師としての技能だけでなく人員教育を行うためのスキルも必要なため、看護歴5年~10年の中堅看護師が担当することが多くなります。
チームナーシングを行うことで、新入や中途入職者のチームのサポートを受けながら早く仕事に慣れることができます。
パートナーシップナーシングとは
パートナーシップナーシングは二人の看護師が協働する看護方式です。
お互いの持つスキルを活かしながら不足している部分をもう一方がサポートすることもできるので、患者に提供できる看護の質を高めることが可能です。
また、点滴や服薬などの医療行為も2重チェックすることができるので人的ミスを減らす効果もあります。
モジュール型プライマリーナーシングとは?
看護方式にはいろいろな種類がありますが、モジュール型プライマリーナーシングは、一人の看護師が患者の入院から退院まで一貫して担当するプライマリーナーシングと、チームナーシングを組み合わせた看護師の人数が少ない日本独自の看護方式です。
別名モジュール型継続受け持ち方式とも呼ばれますが、病棟などで編成したチームの中を数名の単位(モジュール)に分け、プライマリーナーシングと同様に一人の患者に対し一貫した看護を行います。
メリット1 業務効率の良い看護を行うことができる
看護計画の立案から実際の看護、評価を行うことは変わりませんが、一人での担当ではないため相談もしやすく看護もチーム体制で対応することができるので業務効率の良い看護を行うことが可能です。
メリット2 患者と信頼関係を築きながら業務的な負担は少なくなる
また、患者にとっては入院から退院まで特定の看護師が対応してくれるため、信頼を築きやすい環境は変わりませんが、看護師にとっては複数人で患者を担当することになるため業務的な負担は少なくなります。
メリット3 新人看護師の看護能力が身につく
チームリーダーが各モジュールの業務管理をしながら継続的な看護を行うことができるので、新人看護師もリーダーや先輩の指導を受けながらプライマリーナーシングを行うことができる看護能力を身に付けたり、チーム内で主体的に看護に取り組んだりできるようになります。
プライマリーナースの退院支援とは?
プライマリーナースは入院中の看護支援だけでなく、患者やその家族が安心して療養していけるように退院時の指導を行う役割も持っています。
退院支援の実例
下記は退院支援の事例になります。
事例
- 患者本人や家族に対して理解が深まるまで何度も内服指導を行う
- 入院中の患者の状態について訪問看護師との連携を行う
- 退院後に自宅療養を希望している患者をサポートするための支援を行う
- 自宅近くの掛かりつけ病院や施設やケアマネージャーとの調整を行う
- 他スタッフと療養計画を立てて患者や家族に説明するなど総合的な支援を行う
実際の事例では、患者本人や家族に対して理解が深まるまで何度も内服指導を行ったり、入院中の患者の状態について訪問看護師との連携を行ったりと退院後に自宅療養を希望している患者をサポートするための支援を行っています。
また、自宅近くの掛かりつけ病院や施設やケアマネージャーとの調整、病院内の薬剤師やリハビリ担当者、栄養士と院内スタッフでカンファレンスを行った上で療養計画を立てて患者や家族に説明するなど総合的な支援を行うこともあります。
プライマリーナースに求められるスキルとは
病院によっては患者が退院後に在宅や地域で安心して生活や治療を行うための支援や退院調整を行う退院調整看護師もいますが、明確な担当者がいない場合は病院内の調整だけでなく地域医療の担当者との調整などもプライマリーナースに求められるスキルです。
退院前に病気や障害の現状や退院後に必要な治療などを説明した上で、患者がどのように療養していくのかを決めるための退院支援、現時点での課題などをソーシャルワーカーと共有して、退院後の在宅支援や自宅近くの医療機関との連携など退院調整のサポートも行っていきます。
機能別看護とは?
看護提供体制とは、プライマリーナーシングやチームナーシングなど、看護を行うための看護方式を取捨選択してその病院の看護体制を構築することを意味します。
多くの病院ではより質の高い看護を提供するために、新しい看護方式を取り入れたり、従来の看護方式にない独自の看護方式を構築して看護体制を整えています。
そんな中、より複雑化・多様化していく看護業務に対応するために考えられたのが機能別看護方式です。
機能別看護方式とは
機能別看護方式は、これまで一人の患者さんに対し一人ないし複数の看護師が対応していた受け持ち制看護師と異なり、検温や注射、服薬など業務別に看護師が対応するため役割機能別業務体制とも呼ばれています。
メリット … ミスが起こりにくく看護師の心身の負担が少ない
デメリット … 患者との関係性が薄くなる、主体的に働く意欲ややりがいが持ちにくい
一つの業務に集中することができるので、ミスが起こりにくく看護師の心身の負担が少ないというメリットはありますが、患者との関係性が薄くなるというデメリットもあります。
また、固定された業務がメインになるため主体的に働く意欲ややりがいを持ちにくく、総合的に能力の高いオールラウンダーな看護師が育成されにくい面があるだけでなく、患者にとっても気軽に相談などをしにくい環境となるため機能別看護方式を採用している病院は少なくなりました。