7対1の看護配置とは?
7対1の看護配置が行われている病院は、主に急性期医療を行っている病院であって患者10人あたり医師1人以上の配置が必要とされる施設です。
無理なく業務が行える
患者と看護師の比率が7対1となっていると、看護師1人が担当する患者数が7人に留まるので細やかなケアができます。
そして、働く看護師にとっても1人で看護する患者数が7人以内に限られるからこそ、目が行き届く範囲内で無理なく看護業務が行えるとされているわけです。
看護師が余る場合は?
しかし、全ての病院で7対1の看護基準により看護師を配置すると、急性期を過ぎて回復期や慢性期に入って手がかからない患者数が増えた時に看護師の数が余りやすくなります。
そこで、看護基準の要件をより細かく設定することにより、13対1といった看護配置となります。
回復期や慢性期に差し掛かる患者が急変する可能性が低い病棟に関しては、看護師が受け持つ患者数を増やしても支障が無いと判断されるわけです。
施設の役割によって看護配置は変わる
実際の看護配置は各施設が果たす役割により変わり、看護配置は7対1の要件から13対1または15対1といった比率で細かく区分けされるように制度が変わりつつあります。
そして、急性期の患者受入比率が高い病院には従来通り7対1の看護配置を行い、慢性期に入った療養患者が多い病院に関しては13対1といった看護配置へと切り替えています。
看護配置の要件は
看護師配置基準は各医療機関の病棟により異なり、手術や検査が多い急性期の病棟では7対1配置基準が採用されています。
一方、慢性期にある長期療養が必要な病棟に関しては15対1といった比率での看護師比率が一般的です。
そして、外来看護師については医療法により定められた30対1の看護師配置基準が採用されています。
しかし、多くの病院では21対1といった医療法で定められている看護師配置基準を上回る配置が行われています。
看護配置基準の計算方法とは?
看護師配置基準の計算方法は、平均入院患者数と看護師の勤務シフト数により求めることが可能ですが、4週間単位での計算方法を多くの病院で採用しています。
具体的な計算式は、下記のようになっています。
平均入院患者数 × 勤務帯数(2または3交替)× 4週間(28日)÷(看護配置数 × 看護師勤務日数20日)
実際に雇入されている看護師の人数と比較することにより、看護師配置基準よりも多いかどうかが分かります。
病院により勤務帯数2交代と3交代で異なり、1ヶ月30日ではなく4週間となる28日を基準として看護師配置基準が計算されている点に注意しなければなりません。
地域によって看護配置基準は変わる
また、看護配置数に関しては病院が地域で果たす役割により看護師配置基準が変わる点に注意しましょう。
看護配置数が少ない病院ほど急性期医療に携わっていて、受け持つ患者数が少ないから楽とは限らず患者が急変するリスクが高い点を把握しておく必要があります。
7対1看護と入院基本料の関係
看護配置により入院基本料は変わります。
患者7人に対して1人の看護師が配置されている病院ほど、手厚いケアを必要とする急性期の患者を対応します。
このため、2020年7対1入院基本料は1,667点とされています。
一方、13対1入院基本料は1,174点となっているので診療報酬として493点もの差が生まれているわけです。
入院基本料の考え方
入院基本料をわかりやすくかんたんに説明すると、旅館への宿泊をイメージすると理解しやすくなります。
数日間だけ宿泊するならば、1泊あたりの金額が高く仲居の人数が多い高級旅館であっても懐は痛みません。
むしろトラブルを回避するためにも初めて訪れる宿ならば奮発するでしょう。
一方、病状が安定していて湯治のために旅館を利用するならば、仲居がほとんど不要な湯治向けの宿へ長期間滞在することを選びます。
患者のリスクによって入院基本料は設定されている
病院の看護師数は同じであっても、看護配置基準が7対1といった多い看護師数となる場合、患者受入数は少なくなるので入院基本料も上げることになります。
患者1人に対して急変リスクや看護頻度が高くなるからこそ、入院基本料が高く設定されているわけです。
診療点数が多く設定されていることは、同じ日数入院しても入院基本料が高くなっていることを意味します。
看護配置基準が高く看護師数が患者数に対して多いならば、同じ日数だけ入院した時の費用が高額となりやすいです。
7対1看護のメリット
7対1看護のメリットは、患者にとっては看護師数が患者数に対して多いので、目が行き届く手厚いケアを期待できます。
夜勤看護師の負担が低くなる
そして、看護師にとっても1人で受け持つ患者数が常時7人以内という点から、13対1や15対1よりも特に夜勤時にかかる負担が低くなり働きやすいと考えられます。
看護基準により配置される看護師数は、4週間を通しての平均値となります。
このため、7対1看護であっても深夜勤については1人で7人を超える患者数を看護しなければならないからです。
13対1や15対1ともなれば更に夜勤時間帯は最小限の看護師数で数多くの患者を看護しなければなりません。
休みをカバーしてもらいやすい
また、7対1看護の病棟勤務では看護師の病欠や体調不良時にもカバーしてもらいやすい点が挙げられます。
在籍している看護師数が多いからこそ、看護師間で多少のシフト変更を融通し合うことが可能です。
働きやすく離職率が低い
13対1や15対1では、病棟の状況により急にシフトを変わっても普段受け持っていない患者だった場合には、見た目の数字以上に患者数が多いと感じられます。
このため、7対1看護は患者だけでなく看護師にとっても働きやすく身体への負担が少ないと考えられる勤務環境です。
そして、7対1看護配置の病院ほど看護師の離職率が低い傾向にあります。
7対1看護のデメリットは?
7対1看護ならば全ての看護師が働きやすく看護環境が恵まれていると考えがちです。
しかし、7対1看護は病院側にとって負担が大きく無理して維持している病院ほどしわ寄せが看護師へ向けられます。
一通り業務をこなせる看護師が少ない
なぜなら、7対1看護基準を満たしているものの、新人看護師を含めた人数で計算されているからです。
実際に一通りの看護業務を指示なしでこなせる看護師数は少なくなりがちです。
とりわけ看護師の人数が少なくなる夜勤では、配置されている看護師の中に1人でも新人が含まれていると忙しい状況に拍車がかかります。
外来看護師のカバーをする
また、7対1看護を維持するために病棟の看護師が外来看護師を兼務している例もあります。
外来看護師配置基準となる30対1をカバーする役割を7対1看護病棟の看護師が担っている例もあるくらいです。
このため、7対1看護だから看護師の1人あたりにかかる負荷が減るとは限らず、場合により他の部門から看護業務を振り分けられてしまうことさえあります。
7対1看護でも安心はできない
そして、7対1看護を謳う病院で働く看護師の平均勤続年数をチェックすれば、いかに7対1看護だからといって安心できないかが分かるはずです。
7対1看護を行う病棟は急性期治療を行う病棟だからこそ、診療報酬が高い分だけ看護の手間も多く必要です。