看護のアセスメントとは?
看護アセスメントとは、看護過程のプロセスの一つです。
アセスメントとは、情報を収集して、分析や統合することを指します。
看護過程5つのプロセス
看護過程は5つあり、「看護アセスメント」「看護診断」「看護計画」「看護介入」「看護評価」を繰り返すことが特徴です。
♦看護過程5つのプロセス♦
看護アセスメント(情報収集と分析)
看護診断(アセスメントを参考にした原因の特定)
看護計画(問題を解決するための目標を設定し、実施計画をする)
看護介入(計画に基づき、実際に行うケア)
看護評価(実際に行ったケアから得られた結果や評価)
看護アセスメントは情報収集と分析になり、看護診断とはアセスメントを参考にした原因の特定になります。
そして、問題を解決するための目標を決め、看護計画を立てるのです。
看護介入とは、実際に行うケアのことを指します。
看護評価は、実際に行ったケアから得られた結果や評価のことです。
その評価も分析し、ケア内容の見直しもします。
看護アセスメントの重要性
医療現場で適切な診断をするためには、看護アセスメントは大切です。
その内容をもとに診察する場合もあるため、正確な情報収集ができるといいでしょう。
まず、患者さんが訴えていることや感じている症状を聞き、主観的情報を明確にします。
その後、診察や検査を行い、具体的な診察結果や検査数値を出すのです。
日常生活の内容や内服薬の状況なども把握します。
主観的情報と客観的情報をもとに、分析と結合をすることも必要です。
その際、理由や背景・顕在的に起こっている内容も分析できるといいでしょう。
アセスメントの書き方
看護アセスメントの書き方は、症状や状況を明確にするため、詳細に記載することが大切です。
ポイント1 詳細に記載する
例えば、疼痛がある場合、発生時期や部位・継続期間・症状を記載します。
これらが明確になっていると、多くの候補から原因を数個に絞り込めるのです。
そして、適切な検査に導くこともできます。
ポイント2 看護理論の枠組みを意識する
また、アセスメントを書く際には、看護理論の枠組みなどを意識しながら作成するといいでしょう。
具体的には、ヘンダーソンの「14の基本的欲求」、ゴードンの「11の機能的健康パターン」、マズローの「欲求5段階説」などがあります。
ポイント3 アセスメントシートを活用する
看護アセスメントには記載する内容が多いため、すでに書式ができている「アセスメントシート」を利用するのも、一つの手段です。
事前に記載する内容の項目が書いてあり、効率的にアセスメントが書けます。
項目に沿って質問などもできるため、聞き忘れや記載忘れを防ぐこともできるでしょう。
アセスメントシートは病院独自に作成したものや、日本看護協会が提供するフォーマットを利用することも可能です。
フォーマットは、インターネット上でダウンロードできます。
また、訪問介護など特定分野の場合は、専用フォーマットの作成もしくはダウンロードをするといいでしょう。
アセスメント能力が向上するコツとは?
アセスメント能力を向上させるためには、「SOAP」について理解し、意識しながら情報収集することが大切です。
「SOAP」の意味&使い方とは
「SOAP」の意味について紹介していきます。
「S」Subject 主観的情報 … 患者さんの訴えや話から得た自覚症状や病歴などの情報
「O」Object 客観的情報 … 医師や看護師などの医療スタッフが診察・検査して得た情報
「A」Assessment 評価 … 主観的情報と客観的情報を参考にして、分析と結合・判断・評価した内容
「P」Plan 計画(治療) … 主観的情報と客観的情報・アセスメントを参考にした治療計画や方針を記述
「S」はSubjectで、主観的情報を指します。
患者さんの訴えや話からの自覚症状や病歴などです。
「O」はObjectで、客観的情報になります。
医師や看護師などの医療スタッフが診察・検査して得た情報です。
「A」はAssessmentは評価で、主観的情報と客観的情報を参考にして、分析と結合・判断・評価した内容になります。
「P」はPlan計画(治療)で、主観的情報と客観的情報・アセスメントを参考にした治療計画や方針を記述するのです。
アセスメント書き方のコツ
アセスメントを記述する時のコツは、「現状の判断」「原因の特定」「今後の予測」を明確にすることです。
患者さんの状況をSOAPに当てはめる時に、この3項目を考えながら記載します。
特に、アセスメントでは現状や原因を明確にできると、今後の予測ができ、適切な計画が立てやすくなるでしょう。
また、主観的情報と客観的情報をしっかりと区別することも大切です。
主観的情報は患者さん自身が伝えた言葉を記載します。
例えば、「腰が痛くて悩んでいる」「腰の痛みを治したい」などです。
そして、客観的情報では、診察や検査に基づいた情報として、症状や検査の数値などを記載します。
アセスメント書き方:ゴードンの理論
ゴードンの理論を理解することで、看護アセスメントを詳細に記載できるようになります。
ゴードンの機能的健康パターンとは
看護理論家のマージョリー・ゴードンが、あらゆる看護場面で適応できるアセスメントの枠組みを考えました。
そして、看護診断項目を機能的健康パターンの11項目に分けていることが特徴です。
項目1 … 健康知覚・健康管理(健康状態、受診行動、疾患や治療の理解度、身長、体重、アルコール、喫煙)
項目2 … 栄養・代謝(身長、体重、BMI、入院前後の食事内容、摂取量、間食、偏食、感染の兆候)
項目3 … 排泄(排便の回数、性状、量、腎機能データ、排泄行動、介助の有無、膀胱留置カテーテルの有無)
項目4 … 活動・運動(呼吸、脈拍、血圧、運動機能、呼吸機能、職業、運動歴、身体の障害、バイタルサイン)
項目5 … 睡眠・休息(睡眠時間・熟眠度、睡眠導入剤使用の有無、日中、休日の過ごし方、入眠障害)
項目6 … 認知・知覚(視力、聴力、味覚、嗅覚、触覚、知覚など感覚器の状態疼痛、意識レベル、言語能力)
項目7 … 自己知覚・自己概念(表情、声、話し方、性格、社会役割、家族内役割、今後の疾患の見通し)
項目8 … 役割・関係(社会役割、職業における内容、満足度、家族の面会状況、経済状況、キーパーソン)
項目9 … 性・生殖(月経事情、生殖器の状態、妊娠、分娩回数、年齢、家族構成、更年期症状の有無)
項目10 … コーピング・ストレス耐性(ストレス因子の有無、ストレス発散方法、家族のサポート状況)
項目11 … 価値信念(宗教、宗教的習慣の有無、習慣の有無とその内容、信念、目標)
例として項目5でSOAPに当てはめる場合、Sには「眠れない」「睡眠薬が必要」、Oには「睡眠時間は〇時間」「覚醒回数は〇回」などを記載します。
価値信念を把握することが大切
ゴードンの理論に沿って看護アセスメントを書く際、価値信念を把握することは大切です。
具体例として、患者さんが意思決定する時の価値観や信念・目標などを指します。
また、医療に関する信仰がある場合は、それを尊重できるようにするといいのです。
アセスメント書き方:ヘンダーソンの理論
ヘンダーソンの理論とは、看護過程での「14個の基本的欲求」のことです。
ヘンダーソンの基本的欲求
ヘンダーソンは看護まとめ書を執筆していて、看護過程を初めて作成したと人とされています。
14の構成要素は、人の基本的欲求をもとにしていて、入院患者さんだけでなく、あらゆる人が対象になることが特徴です。
項目1 … 正常に呼吸する(呼吸数、呼吸機能、胸部レントゲン、呼吸苦、息切れ、自宅周辺の大気環境)
項目2 … 適切に飲食する(食事摂取量、摂取方法、嗜好品、アレルギー、身長、体重、BMI、必要栄養量)
項目3 … 身体の老廃物を排泄する(排泄回数、性状、量、尿意、便意、発汗、食事、水分摂取状況)
項目4 … 移動する、好ましい肢位を保持する(ADL、麻痺、骨折の有無、安静度、生活習慣、認知機能)
項目5 … 睡眠、休息する(睡眠時間、パターン、,騒音の有無、入眠剤の有無、疲労の状態、ストレス状況)
項目6 … 適切な衣類を選び、着脱する(AOL、運動機能、認知機能傷害の有無、麻痺の有無、活動意欲)
項目7 … 衣類の調節と環境の調整により体温を正常に保持する(体温を生理的範囲内に維持するバイタルサイン、療養環境の温度、湿度、空調状況、発熱の有無、感染症の有無)
項目8 … 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する(入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無、爪、鼻腔、口腔の保清,尿、便失禁の有無)
項目9 … 危険を避けると共に他人を傷害しない(危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能、術後せん妄の有無、皮膚損傷の有無、感染予防対策)
項目10 … 他者とのコミュニケーションを持ち、自分の感情、欲求、恐怖感情、欲求を表出する(表情、言動、性格、家族、医療者との関係性、言語障害の有無、視力、聴力、認知機能、メガネ・、補聴器等の有無)
項目11 … 自分の信仰に従って礼拝する(信仰の有無、価値観、信念、信仰による食事、治療法の制限)
項目12 … 達成感のあるような形で仕事をする(社会的役割、職業、入院、疾患が仕事、役割に与える影響)
項目13 … 遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する(趣味、休日の過ごし方、気分転換方法、運動機能障害、認知機能、ADL)
項目14 … 「正常」な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる(発達段階、疾患、治療方法の理解、学習意欲、認知機能、学習機会への家族の参加度)
呼吸や飲食・排泄・睡眠などの「生理的欲求」、危険を避けると共に他人を傷害しないなどの「安全欲求」もあります。
また、「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」など、大きく分けて5つの欲求を示しているのです。
5つの欲求は段階があり、生理的欲求などの低位欲求が満たされることが大切です。
その後、安全欲求や社会的欲求などが満たされていくと、さらに満足できます。
そして、承認欲求や自己実現欲求なども加わり、充足されていくと、健康回復や増進にも繋がるのです。
ヘンダーソンアセスメント書き方のポイント
ヘンダーソンアセスメントの書き方は、「充足アセスメント」「未充足アセスメント」として作成するのがポイントです。
具体例として、呼吸に関する充足アセスメントの場合、「呼吸回数は正常で、安楽に呼吸ができている」とします。
未充足アセスメントの場合、「息苦しさや息切れがあり、安楽に呼吸できない」となるのです。