グリーフケアとは
『グリーフ(grief )』は、大切な人を失ってしまうことによる大きな悲しみ(悲嘆)という意味です。
このようなグリーフ状態にある人に寄り添って、悲しみを乗り越えるサポートをすることを『グリーフケア』を言います。
グリーフケアは「悲嘆ケア」や「遺族ケア」と呼ばれることもあります。
悲嘆のプロセス
大切な人を失ったあと、死を受け入れてから乗り越えていくまでに、精神状態にはいくつもの変化があると言われています。
精神状態は、下記のような段階で変化していきます。
この段階を『グリーフワーク』といいます。
ショックの段階
あまりのショックにより、素直に死を受け入れることができない状態です。
無感覚になり、涙も出ず、感情が湧かなくなります。
死を受け止めきれない
麻痺状態から回復すると、徐々に現実として受け止め始めますが、受け止めきることはできません。
死を受け入れると同時に、否定したい気持ちからパニックになり、周りの人や自分を責め始めたり、泣いたり暴れたりしてしまうこともあります。
また、まだ生きているかのように振舞うなど、現実の判断ができないこともあります。
怒りの段階
ショックが収まってくると、怒りや恨み、罪悪感などがこみ上げてきます。
命を救うことができなかった医者や、事故であれば加害者などへの恨みが増幅していきます。
また、故人に対して怒りをぶつけたり、「あの時こうしていれば」と自分を責めてしまうこともあります。
抑うつ状態
死を受け止め日常に戻ると、深い絶望感や寂しさがこみ上げます。
自分や周りのことへの関心を失い、無気力になってしまいます。
立ち直りの段階
死別の苦しみを乗り越え徐々に元気になり、周囲との関りを大切にするなど、前向きに生きるという気持ちになります。
このように立ち直れる段階になるまでグリーフケアが必要となります。
グリーフケアは国家資格がないため、家族など身近な人でも行うことができますが、専門知識を学ぶことで、前述したような激しい感情や症状にも対応していくことができます。
グリーフ ケア アドバイザーの仕事内容
グリーフケアアドバイザーというのは、大切な人を亡くした遺族や周囲の人に寄り添って、心のケアを行う人のことです。
人の死に立ち会うことが多い看護師などの病院関係者や葬儀関係者、介護関係者などが主にグリーフケアアドバイザーとして活躍しています。
グリーフケアアドバイザーの役割
突然大切な人を亡くしてしまった方の中には、その事実を受け入れられずに、心を病んでしまう方もいます。
なかなか立ち直ることができずに、深い悲しみの中でネガティブになる方も多いでしょう。
そこで、適切な知識を持ってそのような方々と向き合うことが、グリーフケアアドバイザーの役割なのです。
遺族の話を聞く
具体的には、まず悲しみの中にいる人のお話しを聞きます。
大切な人がなくなってしまったとき、無理に感情を抑え込もうとすると、感情の整理が難しくなってしまいます。
そのため、感情を吐き出してもらい、その感情を肯定してあげることが大切です。
また、ただ単に話を聞くのではなく、遺族が発する言葉1つ1つに耳を傾ける必要があります。
話しやすい雰囲気を作る
もちろん遺族同士で話をすることも大切ですが、他人であるアドバイザーのほうが話しやすいと感じる人も多いのです。
しかし、無理に話すように誘導してはいけません。
さりげなく寄り添い、話しやすい雰囲気を作ることが重要です。
安易にアドバイスしない
大切な人を亡くした人に対して、応援するような言葉や、アドバイスを言うのはよくないとされています。
下記のような言葉は、遺族を傷つけてしまう可能性があります。
- 「頑張ってください」「元気出してください」などの励ます言葉
- 「大丈夫ですか?」「落ち着きましたか?」などの気持ちを確認するような言葉
- 「こうした方がいい」などのアドバイス
このような言葉を掛けられることで、焦りやプレッシャーを感じてしまいます。
遺族の身体面のケア
また、精神面のケアだけでなく、身体面のケアも必要です。
大きな悲しみを感じている方々の中には、食欲がなくなったり夜眠れなくなったりなど、身体的な症状が出ることがあります。
しかし、食事や睡眠が不十分であるとさらに疲れが溜まって、精神的にも身体的にも悪影響が出てきます。
そこで、遺族が体調を崩さないように注意して見守ることもグリーフケアアドバイザーの重要な役割なのです。
グリーフ ケア アドバイザーに必要な資格
グリーフケアアドバイザーというのは、「一般社団法人日本グリーフケア協会」が認定している資格です。
そのため、グリーフケアアドバイザーになるためには資格を取得しなければいけません。
グリーフケアアドバイザーの資格分類
資格は下記のように分かれており、受験資格や費用などは異なります。
- 2級(初級)
- 1級(中級)
- 特級(上級)
スキルアップを目指すためには、より上級の資格取得が必要です。
資格取得する難易度
グリーフケアアドバイザーの資格は取得のための試験が実施されるわけではないため、取得自体が難しいわけではないといえるでしょう。
ただし、人気があってすぐに定員に達してしまうこともあります。
高齢化の影響などでさらに需要が高まることも考えられるので、取得したい場合は早めに申し込んでおくと安心です。
看護師にとってプラスの資格となる
看護師の場合は人の死に直面することが多く、遺族に寄り添ってケアをしたいと思う人も多いでしょう。
そんな時に資格を持っていると、正しい知識を持った上でケアをすることができます。
遺族外来がある病院で勤務している場合は、仕事の幅を広げるチャンスにもなります。
一般社団法人日本グリーフ専門士協会
ちなみに、一般社団法人日本グリーフケア協会の他には、「一般社団法人日本グリーフ専門士協会」という団体もあります。
ここでは、講座でグリーフケアについて学んだり、グリーフ専門士の資格を取得したりできます。
グリーフ ケア アドバイザーになるには
グリーフケアアドバイザーの資格を取得するためには、一般社団法人日本グリーフケア協会が実施している講座を受けなければなりません。
2級を取得するには
まず2級を取得するためには、「グリーフケアアドバイザー2級(初級)認定講座」を受講します。
受験資格は申請時に18歳以上であることで、講習は1日間です。
1級を取得するには
続いて1級を取得する場合は、「グリーフケアアドバイザー1級(中級)認定講座」を受講します。
受験資格は申請時に2級講座の修了認定を受けていることで、講習は2日間です。
特級を取得するには
特級の場合は、「グリーフケアアドバイザー特級(上級)認定講座」を受講します。
受験資格は1級講座の修了認定を受けていることで、講習は3日間です。
なお、特級を受ける場合は協会からの推薦が重視されるので、誰でも挑戦できるわけではありません。
また、レポートなどの評価も考慮されます。
特級を取得してスキルアップを目指すためには、経験を積んで協会からの推薦を受けるまで成長する必要があるでしょう。
テストは実施されていない
どの級も講習は数日間で行われてテストは実施されないため、テストに向けた勉強をする必要はありません。
しかし、短い時間での講習だからこそ、真剣に学ぼうとする姿勢や自主的な予習・復習などが求められるといえるでしょう。
遺族の心のケアを行う仕事は非常に繊細なものなので、グリーフケアアドバイザーになるにはそれなりの覚悟も必要です。
グリーフ ケア アドバイザーの研修
一般社団法人日本グリーフケア協会が行っている資格講習では、級によって異なる必要な知識を学ぶことができます。
2級の研修内容
2級では、グリーフケアの基本や援助法、注意点などを座学中心で学んでいきます。
ケアを行う上での原則を身に付けて、遺族に寄り添うことができるようになるでしょう。
1級の研修内容
1級では、グリーフケアの経緯や実践方法の講義を受けたり、ゲスト講師の話を聞いたりします。
グループワークでは、他のアドバイザーと交流をすることも可能です。
特級の研修内容
特級では、持っている知識を活かしながら演習をしたり、時事的な問題を学んで対処法の実践を行ったりします。
グリーフケアについてのワークショップや講座を開催したい人にもぴったりです。
研修に必要な料金・会場
研修を受講するためにかかる料金は下記のようになっています。
2級…32,400円
1級…54,000円
特級…不明
また、基本的には東京会場でのみ実施されていますが、時期によって通信講座が開催されていることもあります。
その場合は料金が異なる可能性があるので、事前に確認してください。
研修の申し込み方法
申し込みは、協会のホームページにある専門フォームからできます。
通常5月と12月に募集が始まるので、随時チェックしましょう。
申請書が届いたら料金を支払って、協会に申込書を送付します。
その後、講座参加票が届くのを待ってください。
グリーフ ケア アドバイザーの仕事に向いている人とは
グリーフケアアドバイザーに向いているのは、資格を持った上で人の心のケアをする仕事がしたい人だといえます。
遺族の役に立ちたいと思う人
誰でも、悲しみに暮れている人の心に寄り添おうとすることはできますが、正しい知識を持っている人は多くありません。
しかし、遺族の気持ちの変化は非常に繊細なものであり、ケアの方法を少し間違えただけでも立ち直れなくなってしまうかもしれないのです。
そのため、正しい知識や経験は必要不可欠だといえます。
看護師の仕事をしていて、もっと遺族の役に立ちたいと思ったことがある人は、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
コミュニケーション能力を高めたい人
また、人とコミュニケションをとる仕事がしたい人にも向いています。
グリーフケアアドバイザーの仕事とコミュニケーションは、切り離すことができません。
そのため、高いコミュニケーション能力が求められます。
しかし、ただ単に話すことが得意なだけでは不十分です。
相手が思っていることを自然に引き出したり、本当に考えていることを見つけ出して共感したりする能力が必要です。
なおかつ介入しすぎず、適度な距離感を保つことも必要なのです。
よって、さまざまな側面からコミュニケーション能力を高めたい人にはぴったりな仕事です。