スタットコールの意味とは?
スタットコールとは病院で使用される緊急の呼び出しを意味する英語です。
救急コールやドクターコールとも呼ばれることがあります。
緊急性の高いスタットコール
テレビドラマなどで有名になったコードブルーもスタットコールの一種で、主に患者の容態が急変したことを意味します。
スタットコールは緊急性が高く、手が空いている医療スタッフなら担当部署を問わずに招集します。
また、ホワイトやブラック、ブラウン、ピンクなど他の色の名称が使われることもあり、それぞれに特定の緊急事態を知らせる目的があります。
病院内のパニックを防ぐ目的
いずれも緊急性が高い問題が生じた時に用いられますが、直接的な表現を避けているのは病院内で新たなパニックが生じるのを防ぐためです。
患者への配慮が大切
病院は、怪我や病気などで体調不良に陥っている患者が療養するための施設です。
そこで何らかの緊急事態が発生した場合、スタッフは迅速に対処する必要がありますが、患者への配慮も併せて必要になります。
緊急事態が起きたことを患者が知ると、不安に感じ、そこからパニックが生じる可能性は否定できません。
そのような事態を避けるために、医療スタッフは第三者が聞いても理解できない隠語を使い、情報のやり取りを行っています。
スタットコールが色分けされている理由ははっきりしていませんが、それぞれの色は感情を表現する意味があり、発生した緊急事態に当てはめて次第に慣例化したとされています。
”脅威”を感じたらコードホワイト
コードホワイトには「脅威」の意味があります。
病院は大勢の人が出入りする施設であり、不審者が侵入する可能性は否定できません。
不審者が医療スタッフに対して暴言を吐いたり暴力を振るうことがあり、そのような場合にコードホワイトが出されます。
コードホワイトが出されると、病院に常駐する警備員や体が大きい男性の看護師が現場に駆け付け、暴言や暴力の発生源である不審者を取り押さえるのが主な対処法になります。
不審者に限らず、患者や見舞客による暴言や暴力もコードホワイトの対象です。
コードホワイトはどの病院でも起こる可能性があるトラブル
医療スタッフの脅威が対象であるコードホワイトは、患者を多く抱える大きな病院ほど回数が多くなります。
人が多ければそれだけトラブルが発生する可能性も高くなるのが理由ですが、小規模な病院だからといってコードホワイトが起きないわけではありません。
暴言や暴力の基準は人それぞれであり、被害を受けた医療スタッフが脅威と感じたらコードホワイトの条件を満たしていると言えます。
そのため、どのような病院でも絶対にコードホワイトは起きないと言い切ることはできません。
病院が”危険”な状態でコードブラック
コードブラックは危険な状態が対象になるスタットコールで、コードホワイトと似ています。
しかしホワイトは個人が対象なのに対し、ブラックは病院全体が対象になっているのが特徴です。
具体的な例として、以下のようなときにコードブラックが出されます。
テロの標的になったなど、病院全体が甚大な被害を受けるおそれがある場合
また、危険な状態とは人為的な理由によるものを指し、自然災害ではコードブラックは使われないのが普通です。
※自然災害で使用されるスタットコールは後述の「”災害”発生でコードブラウン」で紹介します。
ちなみに、海外ドラマの「コード・ブラック 生と死の間で」では全米で最も忙しい病院(救命救急外来)が舞台となっており、年間300回ものコードブラックが発生しているというストーリーです。
ドラマの設定にあるように、救命救急外来は病院の中でもコードブラックの発生が最も多いと言われています。
病院にとっての「危険」は様々
コードブラックは病院にとって「危険」な状態を意味するため、テロに限らず人為的なものであれば様々なトラブルが対象です。
以下のようなケースもコードブラックの対象になります。
- 緊急救命室の収容人数が多すぎて機能不全に陥る
- 患者が自殺を図る 等
病院の運営に大きな支障を及ぼすトラブルは非常に危険なこととされているのが理由ですが、危険の定義は絶対的なものではありません。
病院ごとに定義が異なるため、場合によっては医療スタッフ同士で意思の共有が困難になることもあります。
そのため、コードブラックはよほどの緊急事態でなければ出されることはほぼ無いと言えるでしょう。
”誘拐”発生のときはコードピンク
コードピンクは病院内で誘拐事件が起きた際に出される特殊なスタットコールです。
特に赤ちゃんを狙った誘拐を指すことが多く、医療スタッフが総出で病院内にいる人を調べます。
犯人の身柄が確保されるまでは、誰も病院の敷地外に出ることができないのもコードピンクの特徴です。
その内容からコードピンクが出された病院内は、非常に危険な状態と言っても過言ではありません。
そのため、コードが解除されるまでは医療スタッフの多くが神経を張り詰めた状態を強いられることになります。
また、犯人が病院外へすでに逃亡している場合には、犯人の特徴や逃走経路などを速やかに警察に連携することも病院側の役割になっています。
小さい子供の自発的な脱走でも使われることがある
赤ちゃんの誘拐事件が起きた際に使われるイメージがあるコードピンクですが、病院にいる小さい子供が自分の意思で逃げ出した場合も出されることがあります。
例えば、下記のようなケースも稀に存在します。
病院を訪れる小さい子供の中には保護者から虐待されている
そのような子供がわずかな隙をついて逃げ出し、病院がコードピンクを出す結果に至るのです。
事態が明るみになるまでは子供が自発的に逃げたのか、それとも誰かに誘拐されたのかは判断することができません。
理由の如何を問わず、子供の姿が見えなくなったらコードピンクを出すのが病院の務めと言えるでしょう。
”災害”発生でコードブラウン
コードブラウンは地震や津波、土砂崩れなどの自然災害が発生した際に多数の負傷者が搬送されることを想定して出されるスタットコールです。
ブラウンは茶色を意味する英語であり、負傷者の体が泥で汚れて茶色に見えることに由来します。
天災以外に車両の事故やビル火災などが起きた際もコードブラウンが出されることがありますが、このような状態になった病院は多数の負傷者を受け入れるための準備を行います。
空きベッドを作るため、症状の軽い入院患者を強制的に退院させるのが主な方法です。
また、医療スタッフを負傷者の受け入れに回すため、外来診療を中止することもあります。
コードブラウンが解除されるまでは来訪を控えるのが無難
コードブラウンが出た病院は、災害による負傷者の受け入れで混乱している状態です。
そのような所で外来診療を受けようにも、医療スタッフに気付いてもらえない可能性があります。
また、よほどの重症でもない限り診療そのものを拒否されることも珍しくありません。
外来診療は患者の自己責任で病院を選ぶ形になるので、コードブラウンが解除されるまでは別の病院を利用するのが賢明と言えるでしょう。
病院関係者以外は聞き流すべき
スタットコールは患者のパニックを防ぐことを目的にした隠語です。
病院が関係者以外に知らせないように発信しているため、仮に耳にしたとしても、不用意に周りの人に伝えるべきではありません。
患者がパニックになったり、現場に人が押し寄せるなど、事態を悪化させかねません。
緊急事態の時には、病院の指示に従うように心がけましょう。