ケアマネジメントの歴史
ケアマネジメントとは、介護や支援を必要とする高齢者と福祉サービスや医療サービスなどを繋ぐことです。
高齢者一人ひとりにどのようなサポートが必要なのかを考え、適切な介護サービスを受けられるようにケアプランを作成します。
ケアマネジメントという具体的な考え方が定着したのは高齢化社会と呼ばれるようになった20世紀後半以降ですが、それ以前にも高齢者福祉に対する取り組みは行われていました。
最初期の高齢者福祉
最初期の高齢者福祉は10世紀ころにイギリスで始まった救貧院とされています。
働くことができず、身寄りのない高齢者に対して住居を提供するものでした。
当時の救貧院は病院の業務も兼ねていましたが、これは当時の病院は高齢者が利用する施設とされていたためです。
身の回りの世話を行うようになった
イギリスの植民地だったアメリカでも同様の救貧院が広まりましたが、やがて単に住居を提供するだけではなく、身の回りの世話を行う福祉サービスが付随されるようになりました。
高齢者に生きる気力をもたらし、毎日を快適に暮らしてもらおうとする考えがアメリカ流の高齢者福祉として完成し、その考え方は世界中に広まりました。
現在に通じるケースマネジメントの起源はアメリカの福祉サービス付き救貧院と言えるでしょう。
高齢者福祉の正しいあり方
高齢者を社会の一員として扱い、尊厳を保ちながら充実した生活を営んでもらうことが高齢者福祉の正しいあり方とされています。
高齢者とひとくくりにするのではなく、個々の違いを踏まえて対処するのがケースマネジメントの特徴であり、現在の高齢者福祉の主軸です。
ケアマネジメントの目的
厚生労働省によれば、ケアマネジメントは高齢者の尊厳を守り、自己決定や自立を支えることを目的としたものとされています。
高齢者の考えや価値観を尊重する
前述したことをわかりやすく言えば、高齢者を軽視せず一人の人間として尊重しながら適切に看護するということです。
自己決定や自立に法律上の定義はありませんが、高齢者自身の考えや価値観を尊重し、そのうえで心身の健康を良好に保つ看護を行うのがケアマネジメントの正しいあり方と言えるでしょう。
高齢者を抑圧しない
大切なことは看護する側の都合で高齢者を抑圧しないことです。
高齢者福祉に関する問題として、看護される高齢者の尊厳が軽視されることが挙げられます。
価値観の違いから他人に看護されることを恥ずかしく感じる高齢者も珍しくありません。
頭ごなしに叱ったり、強引に身体介助を行うのは高齢者を深く傷つけます。
一人の人間として接する
また、小さい子供のように扱うのも決して良い方法ではありません。
加齢による身体機能の低下は高齢者に不安や苛立ちを感じさせます。
自分の体が思うように動かないことを悩んでいる所に心無い言葉をぶつけるのは高齢者福祉のあり方に背く行為と言えるでしょう。
一人の人間として敬意を持って接するのが高齢者福祉に携わる者に求められる姿勢なのは間違いありません。
ケアマネジメントの流れ
一口にケアマネジメントと言っても具体的にどのようなことを行うのかはあまり知られていません。
ケアマネジメントのプロセス
ケアマネジメントの展開過程は対象になる高齢者の心身の状態で多少の違いはあります。
しかし、どの場合にも大まかな流れとしては、福祉施設の利用者など高齢者本人やその親族からの相談を受け、相談内容から解決すべき課題を見い出すことから始まります。
課題を解決するためのケアプランを作成し、条件に合致する福祉サービスの具体的な調整を行ったうえでそのサービスを評価するのが一連のプロセスです。
高齢者の心身状態の変化にも対応する
福祉サービスを評価するのは類似した案件をスムーズに解決するためのデータ収集が主な目的になっていますが、同じサービスでも人によって評価内容が異なるのも事実です。
福祉サービスへの評価を下すことで一連のプロセスは終結しますが、高齢者の心身の状態は日々変化します。
ケアプランの見直しを迫られることは珍しくありません。
不測の事態に陥っても慌てず、速やかに対処するのがケアマネジメントに携わる者の重要な心得と言えるでしょう。
施設の利用状況を把握しておく
福祉サービスを変更する必要が生じた場合は特に迅速な対処が必要ですが、すべての福祉サービスが即座に利用できるとは限りません。
中には順番待ちの状態になっている所もあるので、日頃から福祉サービスを提供する施設の利用状況を把握するのもケアマネジメントにおける重要なポイントです。
ケアマネジメントに必要な能力や特徴
ケアマネジメントの仕事は高齢者に対するサービス業と言えます。
そのため、求められるスキルは一般的な接客業や会社の営業職に類似している点も少なくありません。
高齢者福祉に関する法律を熟知する
高齢者福祉に関する法律の熟知はケアマネに必要な知識の中でもっとも重要とされています。
法律は毎年のように細かい変更点があり、高齢者福祉に関する事柄も例外ではありません。
古い制度が廃止されて新しい制度が発足するケースも珍しくないので、日頃から福祉関係の法律は正しく理解する必要があります。
福祉施設の利用状況を把握できる
ケアマネに必要な能力として地域の福祉施設の利用状況を把握できることが挙げられます。
高齢者への適切なケアは福祉施設を利用できて初めて可能と言っても過言ではありません。
福祉施設に空きがなければケアプランを作っても役立てることができません。
どこの福祉施設が利用できるか、高齢者に負担がかからない程度の移動範囲内に福祉施設はどれだけ存在するかなどを把握することが現実的なケアプラン作りの必須条件です。
法律を熟知しつつ、地域の状況を正しく把握したうえで実現可能なケアプランを作成することがケアマネに必要なスキルと言えるでしょう。
高齢者福祉を取り巻く状況は日々変化するので、その点についても注意する必要があります。
コミュニケーション能力
また、コミュニケーション能力も必須と言えます。
ケアマネージャーは利用者やその家族と面談し、ケアプランを作成します。
そのためには信頼関係を築く必要があります。
ケアマネージャーが接するのは利用者とその家族だけではありません。
介護サービスや医療サービスとの連携も必要になるため、コミュニケーション能力は重要と言えます。
連携する看護師の役割
ケアマネジメントにありがちな問題として医療連携がうまくいかないことが挙げられます。
医療連携もケアマネージャーの重要な役割
高齢者は加齢によって体力が低下しているので、急な体調不良に陥るのは珍しいことではありません。
そのような時に医療連携がうまくいかないと重大なトラブルに発展するおそれがあります。
高齢者に適したケアプランを提案するだけではなく、医療機関との連携に気を配ることもケアマネージャーの仕事の一つです。
高齢者福祉と医療は切っても切れない関係であり、医療の現場で活躍する看護師と連携するのはケアマネージャーの重要な役割と言えるでしょう。
それぞれの役割
医療機関とケアマネージャーで高齢者ケアの方向性を共有し、最適な方法を実施するのが正しいあり方になります。
看護師は高齢者福祉の状況を把握しつつ、個人ごとに最適な方法でケアを実施することを心がけます。
ケアマネージャーが福祉の点で高齢者をサポートするのに対し、看護師は医療の点で高齢者をケアするのが大きな違いです。
看護師だから可能なことを理解し、自分に何が求められているかを正しく認識することで初めて質の高いケアマネジメントが完成すると言えるでしょう。
それぞれの役割に沿って適切に行動することが高齢者の心身の健康を良好に保つ条件です。
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