洗髪の目的とは?
福祉施設や病院での看護において洗髪をする目的とはどういったものなのか紹介していきたいと思います。
洗髪の目的&頭皮トラブルとは
目的 頭皮トラブルから波及する全身への影響を防ぐため
頭皮トラブルの原因流れ
- 頭皮が雑菌からの影響を守るため新陳代謝で皮膚を作り替える
- 古い角質がフケとなる
- フケを放置すると雑菌、常在菌が増える
- 菌の出す酵素、排泄物から守るため脳が抗体を分泌する
- 抗体の影響で皮膚が炎症し、強いかゆみが出る
頭皮は紫外線や空気中の雑菌の影響を受けているので、これらの影響から守るために常に新陳代謝を繰り返して新しい皮膚に作り変えています。
新しく作り替える際に、古い角質が「フケ」という形で残ることになります。
この「フケ」を放置してしまうと、空気中にいる雑菌や皮膚の中にいる常在菌のえさとなり数を増やしてしまうのです。
雑菌や常在菌の数が増えると、皮膚に菌が出す酵素や排せつ物が付着するので、危険な物質が入ってきたと感知した脳が抗体を分泌します。
抗体の影響が強くなれば皮膚の炎症を起こし、常に強いかゆみが出る状態になってしまうのです。
頭皮トラブルから身体に与える影響とは?
頭皮トラブルはかゆみだけではなく、身体に与える影響が出てきます。
身体に与える影響
- アトピー性皮膚炎
- 不眠
- うつ病
- 臓器関連の病気
強いかゆみが断続的に続くと、継続的にかゆみに襲われるアトピー性皮膚炎をおこします。
さらにかゆみによるストレスで不眠ともなればうつ病や臓器関連の病気へと発展するリスクがあります。
そのため看護にとって洗髪をすることは、常に清潔な状態を保ち、頭皮トラブルによって引き起こされるストレスを緩和することであり、その結果メンタル疾患や臓器疾患のリスクを減らすことにつながるというわけです。
実際に福祉施設や病院での看護において、洗髪の効果の認識が広がっているので1週間に1回の頻度で洗うように心がけています。
洗髪台・洗髪方法の種類とは
看護施設で洗髪が出来る部屋を創設するときには、必ず準備を整える必要があります。
手足が少し不自由なだけの介護認定1であれば、自分で動いて髪を洗うことができます。
しかし手足が完全に不自由もしくは寝たきり生活になっている介護認定2以上であれば、自分で洗うことが困難なため洗髪専用のアイテムを利用する必要があるのです。
手足が少し不自由な患者
手足が不自由だが体が完全に動かせないわけではない要介護者が洗髪をする時に準備するものを紹介します。
準備するもの … リクライニング車椅子
▽特徴
- 大き目で座席の角度を変えられるもの
- 洗髪車に設置されている洗髪台に移動できる
- 前屈し、水やせっけんが目や鼻の中に入らないできれいに洗える
準備をするものは前屈位ができるリクライニング車椅子です。
リクライニング車椅子は少し大きめの車いすであり、その特徴としては座席の角度を変えられることです。
車いすに乗ることが出来れば施設もしくは洗髪車に設置されている洗髪台に移動できるだけでなく、前屈ができるので水やせっけんが目や鼻の中に入らないのできれいに洗うことができます。
体が完全に不自由で寝たきりの患者
そして体が完全に不自由で寝たきり生活になっている患者であれば、また準備するものが変わってきます。
準備するもの … ケリーパッド
▽特徴
- ビニール製の簡易型洗面台
- 寝たきり生活の人でも安心して洗髪が出来る
寝たきりの患者が利用するのがケリーパッドです。
このケリーパッドはビニール製の簡易型洗面台であり、寝たきり生活の人でも安心して洗髪が出来るように作られたアイテムになります。
使い方としてはベッドの下にバケツを置いたら、付属の水を流すための袋を排水口に装着してバケツに流れるようにします。
ケリーパッドをベッドの上にのせて介護者の頭をくぼみに乗せ、そこで持ち運びができるシャワーを利用し洗髪をするだけです。
洗髪の観察項目とは
看護において洗髪をするときには、事前に指定されているアセスメント項目を確認する必要があります。
アセスメント3項目
- 身体状態
- 頭皮チェック
- 要介護者の気分
アセスメント項目の種類は、「身体状態」と「頭皮チェック」と「要介護者の気分」の3項目になります。
身体状態とは
「身体状態」というのは、洗髪をするとお湯を使うことになるので、頭部が温められるとその熱が血管を通して全身が温まります。
全身が温まると血管拡張が起こるのですが、血流が良くなるというのは良い面ばかりではなく少なからず血圧に影響を与えてしまうのです。
そのため血圧や臓器の状況を診断して、血圧に影響があっても問題がないか確認します。
もちろん血圧以外にも、体温や気分などを確認して体調不良を起こしていないかを確認するのも重要になります。
頭皮チェックとは
次に「頭皮チェック」というのは、洗髪はきれいにするために行うのですが、仮に頭皮にけがや炎症が起きているとお湯やシャンプーが影響をして状態を悪くする恐れがあります。
そのため「頭皮チェック」をすることによって、洗髪をしても頭皮の状態が悪くならないか確認します。
要介護者の気分とは
最後の項目にある「要介護者の気分」というのは、これまで自分で洗っていた洗髪が出来なくなったというのは要介護者にとっては心理的な負担が大きいのです。
そのため仕方のないことだとわかっていても洗ってもらうことに遠慮してしまう人も多いので、必ず洗う前に話をしたうえで気持ちをほぐしてあげることが大事になります。
洗髪の留意点&手順とは
洗髪をする前に、留意点を知っておくことが大事です。
室温を確認する
まず洗髪をする前に、室温を絶対に確認することです。
そして当然ですが洗髪は体への影響が大きいので、作業中は介護者の状況を常に観察する必要があります。
春夏:洗髪前に水分補給をする
夏場であればお風呂場の施設内は高温多湿状態になっているので、その状態だと簡単に脱水症状を引き起こしてしまいます。
そのため春や夏であれば、必ず洗髪をする前に水分補給をして脱水症状のリスクを減らします。
冬:お風呂場を温めておく
そして冬場であれば、お風呂場と廊下との間に温度差があると臓器に負担がかかり心不全のリスクを上げてしまうのです。
そのためお風呂場と移動するまでの室内の温度差を無くすために、必ずお風呂場はシャワーの湯気で温めておくもしくは暖房をつけておく必要があります。
洗髪の手順
次に、洗髪の手順を紹介していきます。
手順
- くしやブラシを使って髪を解く
- 身体が濡れないようにタオルをかける
- 水や洗剤が目や鼻に入らないようにフェイスタオルを顔にかける
- シャワーを使って髪を濡らす
- しっかり泡立てる
- 指の柔らかいところを使ってマッサージをするようにやさしく洗う
- しっかりとシャワーを使って洗い流す
洗髪の手順としては、頭皮を洗いやすくするためにくしやブラシを使って髪を解いておきます。
片麻痺をしているなどの要介護認定1の人は、リクライニング車いすに乗せて洗面台に運ぶ。
そして寝たきり生活をしている人であれば、ケリーパッドを用意して頭を乗せた後に空気を入れて最適な高さに調節します。
身体が濡れないようにタオルで守るだけでなく、水や洗剤が目や鼻に入らないようにフェイスタオルを顔にかけます。
そしてシャワーを使って髪を濡らしたら、しっかりと泡立てたシャンプーの泡で指の柔らかいところを使ってマッサージをするようにやさしく洗うのです。
全体を洗ったことを確認出来たら、しっかりとシャワーを使って洗い流します。
ドライヤーのかけ方とは
シャワーを利用してシャンプーを完全に洗い流したことを確認できたら、軽くバスタオルで水気を拭いた後にドライヤーで乾かします。
ポイント1 季節を問わず温風を使う
ドライヤーのかけ方のコツとしては、季節問わずに必ず温風を使うことがコツです。
その理由として頭部というのは無数の毛細血管があるため、頭部の温度は血流を通して全身に伝わってしまいます。
お湯は最初は温かいのですが、時間が経つと湯気と一緒に熱が外に逃げてしまいます。
この熱が逃げることを「気化熱」というのですが、この「気化熱」が起きるとかなり体温を奪ってしまうため寒いと感じさせてしまうのです。
この寒いと感じる状態というのは、血圧が高い状態から一気に低い状態になることです。
体が健康であれば問題はないのですが、抵抗力が弱っていると病気になりやすいだけでなく、血圧などに異常がある介護者だと気化熱によって心臓や脳に影響を与えてしまう恐れがあります。
ポイント2 ドライヤーをかける時間は5分以内
そのためドライヤーを使うときには、必ず温風モードにするだけでなくドライヤーをかける時間も5分以内で終えることが大事です。
ただ温風モードを利用するだけでは5分以内で乾燥させるのは難しいので、必ずブラシで風通しを良くしながら利用するもしくはタオルでふき取りながら乾かすとよいです。