看護師の行政処分一覧
看護師行政処分については明確な規定が定められていて、違反する行為があった場合には処分を受けることになります。
行政処分の三種類とは
行政処分は免許取消、業務停止、戒告の三種類に分類することが可能です。
免許取消
免許取消は看護師の免許が取り消されてしまう処分で、もし再び看護師として働きたいと思ったなら再取得をする必要があります。
業務停止
業務停止は期間を定めて看護師として業務に従事できなくなる処分です。
最長で3年間の業務停止処分になる可能性があります。
戒告
戒告は行政からの厳重注意とも言えるものですが、看護師として対応しなければならない事項がある場合には速やかな実施を求められます。
行政処分は8つの項目で審議される
行政処分の対象となるものが何かについても規定で明確にされていて、8つの項目のいずれかに該当するときには医道審議会による審議を経て通知を受けるのが基本の仕組みです。
代表例
身分法違反、麻薬関連法の違法行為、殺人や傷害などの刑法に関わる罪、詐欺や窃盗、交通事故 等
業務上過失致死傷についても医療過誤及び交通事犯については該当します。
危険運転致死傷や性犯罪についても行政処分の対象として定められています。
特に交通事故が行政処分の対象になることは留意しておかなければならないでしょう。
交通事故で看護師免許剥奪になる
看護師の行政処分規定として交通事犯による業務上過失致死傷、危険運転致死傷が主に交通事故に関わる項目です。
当て逃げ
例えば、業務用過失致死傷として行政処分を受ける事例として典型的なのが当て逃げです。
交通事故で相手を怪我させてしまったにもかかわらず、警察への通報や被害者への対応をしなかった場合には業務上過失致死傷になります。
飲酒運転
危険運転致死傷では飲酒をして運転をしていたというのが具体例として挙げられます。
人身事故
一方、欠格事由に該当したことによって免許取り消しになることもあります。
基本的には人身事故を起こしてしまうと欠格事由に該当してしまうので免許がなくなってしまうことになりかねません。
人をひいてしまった時だけでなく、車同士の衝突事故であっても、人が死傷してしまった場合には看護師として働けなくなる可能性があります。
死亡事故を起こしてしまったときには即座に審議が行われて免許が取り消されてしまった事例もあるので、看護師として仕事をしていく上では安全運転に十分に注意することが必要です。
物損やスピードオーバーの場合は?
物損事故で人に被害をもたらしていない場合や、事故ではなくスピードオーバーなどの交通違反の場合には看護師の資格がなくなることはないのが原則です。
窃盗をして免許剥奪
窃盗は行政処分の対象として規定に定められているので物を盗んでしまった時には免許を剥奪される可能性が十分にあります。
ただ、必ずしも窃盗をしただけでは即座に免許取消になったり、業務停止になったりするとは限りません。
起訴されて刑法によってどのような処分を受けたかによって看護師が受ける行政処分が異なります。
逮捕されただけでは行政処分の対象にならない?
原則として逮捕されただけではまず行政処分の対象にはなりません。
その後に起訴されるかどうかが処分について大きく違いが生じるポイントです。
窃盗をして起訴され、執行猶予付きの懲役刑になった際には免許取消処分になります。
しかし、示談が成立して不起訴になったときには行政処分を受けることはあまりありません。
実際には業務停止処分になるケースが多い
また、起訴されても罰金刑だった時にも必ずしも行政処分を受けて業務を行えなくなるとは限らないというのが実態です。
看護師が窃盗事件を起こしてしまった時は、実際には業務停止処分になるケースが多くなっています。
軽度な罰金刑や懲役刑で反省の様子が見られるような時には一年から二年の業務停止で済むのが一般的です。
執行猶予付きの懲役刑のように看護師の欠格事由に該当してしまっている事例では免許取消処分になっています。
看護師の行政処分の事例は?
看護師の行政処分について医道審議会で報告されている過去の事例をもう少し具体的に見てみましょう。
2018年看護師等行政処分事例
2018年【答申の概要】
- 免許取消 2件(危険運転致死1件、窃盗1件)
- 業務停止3年 1件(強制わいせつ1件)
- 業務停止2年 1件(窃盗1件)
- 業務停止1年6月 1件(道路交通法違反・過失運転致死傷1件)
- 業務停止1年 1件(住居侵入1件)
- 業務停止10月 1件(傷害1件)
- 業務停止9月 2件(道路交通法違反1件、道路交通違反・過失運転致傷1件)
- 業務停止6月 1件(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件)
- 業務停止4月 3件(道路交通法違反1件、道路交通法違反・道路運送車両法違反・自動車損害賠償保障法違反1件、自動車運転過失傷害・無免許過失運転致傷・過失運転致傷1件)
- 業務停止3月 8件(過失運転致死1件、道路交通法違反5件、名誉毀損2件)
- 業務停止2月 1件(道路交通法違反1件)
- 業務停止7日 1件(業務上過失傷害1件)
2018年1月の医道審議会では危険運転致死によって免許取消処分になっている事例が1件、窃盗が1件報告されています。
窃盗による2年間の業務停止や、傷害事件によって刑法による裁きを受けたことによる10か月間の業務停止などがあり、合計で23件の行政処分がありました。
2019年看護師等行政処分事例
2019年【答申の概要】
- 免許取消 6件(覚せい剤取締法違反1件、傷害1件、建造物等以外放火1件、 ストーカー行為等の規制等に関する法律違反1件、住居侵入、建造物損壊、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反1件、 偽造有印公文書行使1件)
- 業務停止3年 1件 (大麻取締法違反1件)
- 業務停止2年 1件(覚せい剤取締法違反1件)
- 業務停止6月 4件(公然わいせつ1件、富山県迷惑行為等防止条例違反1件、児童買春、児童ポルノに係る行為等の
規制および処罰並びに児童の保護等に関する法律違1件、住居侵入、窃盗1件) - 業務停止4月 1件(道路交通法違反1件)
- 業務停止3月 7件(道路交通法違反7件)
- 業務停止1月 2件(犯罪による収益の移転防止に関する法律違反1件、窃盗1件)
- 戒告 1件(過失運転致死傷)
2019年11月の医道審議会においては免許取消になった事例が6件もあります。
覚せい剤取締法違反、傷害事件、放火、ストーカー行為の他、偽造有印公文書行使による処分も行われました。
業務停止処分では道路交通法違反によるものが大半を占めていて、3ヶ月~4ヶ月の業務停止が大半です。
この他にも、わいせつ行為による業務致死処分や児童ポルノに関わる姿勢の法律違反、住居への不法侵入など、全体で23件の行政処分が行われました。
戒告で済む事例は少ないので、業務停止以上の対応をされることは念頭に置いておく必要があるでしょう。
2020年看護師等行政処分事例
2020年【答申の概要】
- 免許取消 1件 (看護師の業務に関する犯罪の行為1件)
- 業務停止3年 1件 (覚せい剤取締法違反・過失運転致傷1件)
2020年になってからも10月6日最新報告では看護師2人の行政処分が決定され、一人は免許取消、もう一人は3年の業務停止になっています。
このように毎年数十人単位での行政処分が行われている状況があるので、不法行為をしないように十分に気をつける必要があります。
看護師免許を再取得するには?
行政処分によって免許取消などになってしまったときには再取得することが可能です。
再教育制度とは
再教育制度が2008年から開始されて、厚生労働省の主導によって指導者を手配してもらえる仕組みになっています。
戒告 … 集合研修1日程度
業務停止処分が1年未満 … 集合研修2日程度(個別研修20時間程度又は、課題研修及び記述による報告)
業務停止1年以上2年未満 … 集合研修2日程度 + 個別研修80時間程度
業務停止2年以上 … 集合研修2日程度 + 個別研修120時間程度
戒告を受けた程度であれば集合研修のみ、業務停止処分が1年未満なら集合研修と個別研修または集合研修と課題研修、業務停止1年以上の場合には集合研修と個別研修を受けることで再度看護師として働けるようになります。
戒告のみの場合には集合研修は1日なのに対して、業務停止処分を受けた場合には2日になるなど、細かな定めがあるので再教育を受ける時には詳しく確認しておきましょう。
再発行の受け取り方
また、再教育を受けるには費用負担もあるので受けるべきかどうかはしっかりと検討する必要があります。
看護師免許を再発行してもらう必要がある時には、保健所で手続きをする必要があります。
住民票と手数料、印鑑と身分証明書を持参して窓口で申請をすると再発行をしてもらうことが可能です。
申請してからいつ届くかは時期によって違いがあるものの、一般的には四ヶ月くらいかかります。
受け取りには自宅に郵送されてくる免許証交付のお知らせの通知書と身分証明書、印鑑が必要です。
保健所に行って直接受け取るのが原則になっています。