看護師の残業が多い理由とは
看護師は残業が多い職種と言われています。
働く場所が病院やクリニックなど、人の健康に関わる現場なので、患者の健康上の問題をちょっと明日に回すといったことができないからです。
突発的な業務が多い
毎日いつも通りの手順で業務を行うというより、ナースコールや急患などの突発的な業務が発生しやすい仕事とも言えます。
このため、時間通りに終わるということが難しいのです。
平均して70%ほどの看護師が毎日30分以上の残業をしているとの調査報告もあり、どうしても残業がつきまとう職種になってしまいます。
慢性的な人員不足
退勤時間になってやっと自分の担当患者から手を離せるようになり、その後に看護記録を付けたり引き継ぎをしたりと、どうしても残業が当たり前の業務形態になっています。
こういった部分はもちろん人員を増やせば解決に向かうのですが、看護師は慢性的な人員不足が続いており、根本的な問題はそう簡単には解決しません。
定期的な研修
看護師は、専門職で新しい知識を取り入れ続けなければならない職種でもあるため、院内研修や勉強会の参加が定期的に必要とされます。
それらは普通に考えれば労働時間内に行うべき内容なのです。
しかし、実態としては労働時間外に実施している病院やクリニックは多いようです。
前残業は当たり前?
入院患者を抱えている病院は当然のことながら24時間体制であり、シフトを組んで2交代制や3交代制にしなければなりません。
前残業は必須
別々の看護師が同じ患者を診るために引き継ぎ作業、申し送りが必須となるため、どうしても時間通りに始まり、時間通りに終わるということが難しいのです。
特に前残業はイレギュラーではなく当たり前のように就業時間を30分や1時間早めているもののため、負担は非常に大きくなっています。
それを減らすための努力もされていますが、十分とは言えません。
そして、知識を集めるためのカンファレンスも、それへの参加だけでなく前勉強を行う必要もあり、残業発生の原因となっています。
残業代は必ず出さなければならない
残業代は出なければなりませんが、それも病院によって事情が異なります。
特にサービス残業が当たり前になっている病院で新人の看護師だけが残業代を請求するというのは、なかなか勇気の要ることと言えるでしょう。
残業をした看護師としても、自分が楽になるために前残業をしているという意識があったり、経験が足りないから時間外に勉強をしているという意識もあるでしょう。
病院側としても、変形労働時間制で採用した人には一定以上の時間でないと残業代は出せないとか、新人のうちは準備も勉強のうちだから残業代は出せないとか言い訳をするかもしれません。
しかしそういったものは関係なく、残業代を出さないといけないのは法律で決まっています。
残業代が出ずに悩んでいる人は労基に相談するのが近道でしょう。
残業代の平均はどれくらい?
看護師の残業は日勤や夜勤、そして勤続年数などによっても違いがありますが、平均すると毎日30分以上は残業していると言われています。
しかし、これも前残業やサービス残業などの時間は含まれていない数値であり、実際の残業時間はもっと長いものという声もあります。
どの職種でも同じですが、新人ほど早く出勤して準備しなければなりません。
経験の浅いうちは作業自体も時間が掛かるものであり、それが残業時間へと跳ね返ってくるのです。
残業代の計算方法
基本給20万円の看護師が1日8時間、月20日間労働した場合、月に160時間の労働になります。
20万を160時間で割ると時給が1,250円になります。
残業代はこれを1.25倍した金額になるため、残業1時間ごとに単価で言うと1,562.5円の残業代が発生することになります。
ただしその残業時間が法外残業だった場合は1.5倍になることもあります。
ですから、計算方法と実際にいくらもらってるかは、その病院によって異なります。
例えば毎日1時間ずつの残業をしていれば、月に31,250円の残業代が発生することになります。
これは基本給20万円で残業代が1.25倍計算だった場合であり、基本給が30万円だった場合は月に46,875円になります。
残業が当たり前の風潮とサービス残業の存在は危険視されており、厚生労働省からは医療スタッフの勤務環境改善に向けた指針が出されています。
新人看護師も残業があるの?
新人看護師は研修中には、残業にならないようにそれほど多くの患者を担当しないように配慮されます。
慣れない作業で仕事が終わらない
しかし当然のことながら新人看護師は経験も浅いため、間違ってしまったり確認に時間を要したりと、どうしても就業時間内に業務が終わらず、残業になってしまうことが多くなります。
また、業務の終わりに看護記録を付けるのも慣れていないため時間が掛かってしまい、毎日2時間や3時間の残業をして書き上げる、といった声も聞かれます。
試用期間中は残業代が出ない
新人看護師は試用期間中には残業代が出ないことに不満を感じてしまいます。
その不満から、残業代が出ないことに対して文句を言ったり、残業代が出るように上の者に交渉したり、納得できずすぐ辞めるといったことは新人看護師のあるあると言えるでしょう。
看護師の待遇について悩みを聞く相談所などには、こういった残業代に関する悩みを抱える新人看護師からの相談が多く寄せられています。
残業自体したくない場合
簡単に転職と言っても同じような環境の病院に転職しても同じ問題にぶつかるだけです。
残業代が出るか出ないかではなく、残業自体をなるべくしたくないという人には、心療内科などの治療作業の少ない病院を選ぶと良いでしょう。
入院患者などがおらず、予約制で患者を受け付けている小さなクリニックなどは時間通りに業務が回ることが多いため、忙しい大病院とは違った働き方となります。
業務改善の取り組みとは
こういった残業前提の看護師の働き方は、当人たちに無理を強いるだけではありません。
看護師の残業を当たり前にしていると、看護師を目指す人が減っていき、ゆくゆくは社会全体の問題になってしまいます。
残業を減らすことを目的としたアイデアはいくつか提案されています。
IT技術の活用
まずIT技術の活用により、タブレットなど持ち運べる端末で各看護師が情報を確認できるようにして業務効率の向上を目指します。
人手不足に対するアイデア
人手不足に関しては看護補助者の活用が提案されており、看護師の仕事のうち介護資格を持っている人でもできる仕事を分配することで、看護師の仕事を減らすというものです。
シフト制のアイデア
シフト制自体も3交代制であるなら2交代制にして引き継ぎの回数を減らすといったアイデアや、変則2交代制なども検討されています。
「12時間交代制勤務検討プロジェクト」というものも労使で設置されました。
相談や話し合いをできる場を作る
勤務時間内での疲労解消のヒントや、結婚や出産で職を離れてしまう看護師に対して、育児支援を強化するといった働きかけも行われています。
大切なのは各自がこのままで良いと思わず、相談や話し合いのできる場を作ることです。
ミニ集会などで話し合いの場を設けたり、どこかの病院で上手く行っている事例を話し合ったりなど、業務改善の取り組みは進められています。