看護師が取得できる有給休暇日数とは?
看護師は職業柄から有給休暇を取得しづらい事業所がまだ残っていますが、国が定めている取得条件さえ満たせば正社員だけでなくパートであっても取得可能です。
有給休暇の取得条件
同じ事業主の下で6ヶ月間継続して勤務して稼働日の80%を超える勤務という条件さえ満たせば、勤務時間数による日数の差はあるものの有給休暇を取得できることに変わりありません。
ここでいう稼働日とは、看護師としての雇用契約を行った際に働くことを約束した日数であって、週3日勤務という契約ならば週3日勤務を続けた場合を100%の日数として計算します。
実際の有給休暇取得日数は、週5日勤務ならば半年後に10日・1年半後にさらに11日と徐々に付与日数が増えます。
そして、6年半後には20日有給休暇を取得できるわけです。
有給休暇の消滅
上限は年間20日の新規有給休暇付与となっていますが、付与日 2年目からは消滅する有給休暇日数に注意しなければなりません。
なぜなら、有給休暇は付与日から2年以内が有効期限であって、古いものから順次消滅してしまうからです。
このため、公休日が週2日しかないとしても、有給休暇をしっかり取得すれば年間休日130日以上を目指すことはできます。
公休日が何日年間に用意されているのか確認した上で、有給休暇を計画的に取得さえすれば、看護師だからといって休めないという状況を改善することは可能です。
労働基準法とは?
有給休暇に関する規定は労働基準法に定められていて、看護師についても他の会社員と同様に労働基準法に定められた勤務日数と労働時間により有給休暇取得日数が決まります。
有給休暇消化義務
また、労働基準法が改定されて有給休暇取得日数が10日以上となった時点で、年間5日以上の有給休暇消化義務が発生することになりました。
違反すると勤務先の医療機関に罰則規定が適用されてしまうので、夜勤専従者だからという理由で有給休暇取得義務から開放されるわけではありません。
しかし、看護師には医療従事者ならではの独特な働き方があり、医師に代表される宿直勤務といった勤務形態と同様にオンコールや夜勤専従といった働き方があります。
厚生労働省により働き方改革の一環として有給休暇を取得しやすい環境を整えるように検討が行われていますが、有給休暇日数を考える際には労働時間の計算方法について知っておかなければなりません。
オンコール
オンコールは急患対応のために自宅で待機する看護師ならではの慣習です。
オンコールの場合、使用者の指揮監督下には無いとみなされているので有給休暇付与日数にはオンコール待機日が含まれないわけです。
夜勤専従者
夜勤専従者については週2日という勤務形態を採用している人は付与される有給休暇が少ないので、有給休暇取得義務の適用者とはなりません。
夜勤専従者の場合は、週3日以上の勤務で勤続年数により取得義務者となります。
有給は勝手に使われる?
有給休暇の付与日数が年間10日以上となった労働者は、看護師であっても年間5日以上の取得義務が発生します。
このため、自ら有給休暇取得を事前に申し出ていなければ事業者が強制的に取得させることがあります。
なぜなら、労働基準法により有給休暇取得義務が事業者に課されているからであって、多忙な業種であっても無理やり有給休暇を取得させなければ事業者に罰則が科されてしまうからです。
そして、忙しいからという理由で看護師が計画的に有給休暇取得申請をしていなければ、勝手に入れるという状況が発生します。
有給休暇の計画的付与
一方、入院患者を数多く抱える病院の看護師は、一斉に有給休暇を取得すると看護体制に問題が発生するので労使協定により計画的付与を行う事業者が増えています。
有給休暇の計画的付与を行うためには、雇い主と労働組合の間で労使協定を結ぶ必要があります。
このため、労働組合が無い場合には雇い主による時季変更権により有給休暇を勝手に入れることになりがちです。
予め本人の希望が出ていれば無理やり有給休暇取得日時を指定されてしまう可能性は低くなります。
ですが、看護師長といった上役が率先して有給休暇取得を計画的に行わない病院ほど時季変更権を行使されがちです。
大規模な医療法人ほど計画的付与が行われることが多く、各病院ごとの有給休暇申請ルールを事前確認しておく必要があります。
有給の義務化/働き方改革とは?
有給休暇の取得率が低く働きすぎという国際的な批判から、働き方改革として有給休暇付与日数が年間10日以上となった労働者については、年間5日以上の取得を義務化する改正が行われました。
違反をすると事業者に対して30万円の罰金が科されることになっており、罰則規定があるからこそ多くの病院でも対応を迫られています。
しかし、看護師の有給休暇については中途採用が多いためにいつからいつまでが有給休暇の付与基準日となるのか管理しきれていない現状です。
このため、計画的に有給休暇取得をさせなければならないにも関わらず、既に有給休暇取得可能時期を過ぎてしまっているケースが少なくありません。
有給休暇の買取
そこで、有給休暇取得義務違反による罰則を回避するために、病院側から抜け道として有給休暇の買取が行われることがあります。
原則として有給休暇の買取は退職に伴う未消化分や労働基準法を上回る独自の有給休暇日数といった労働者に有利な場合以外は労働者が同意しない限り認められません。
しかし、既に失効してしまっている有給休暇については、過去の休日を平日に変えることで有給休暇を取得することにするか、有給休暇を買取するといった方法により行うしか解決方法がありません。
また、パート勤務や夜勤専従といった勤務日数が少ない場合には、再契約により有給休暇取得義務者から外れるように工作を行う病院があるので要注意です。
退職前に有給休暇を使いきろう!
退職前に有給休暇を使い切るためには、まず自分で有給休暇を何日取得する権利があるのか確認する所から始めましょう。
有給休暇を使い切る際の注意点
有給取得率が低く事前に有給休暇取得申請を行っても拒否されてしまう場合には、退職の意思と有給休暇取得申請を余裕を持ち2から3ヶ月前に行うことが重要です。
なぜなら、看護師はシフト勤務が原則となっているので、1ヶ月前には既に翌月のシフトが調整済みという例が多いからです。
急なシフトの組み換えが発生すると、他の同僚看護師からの嫌がらせが多発しかねません。
丸々1ヶ月有給休暇取得に充てるためにも、シフトが組まれる前の月に退職意思と共に病院側へ伝えておくことが重要です。
有給休暇取得を妨げられた場合
病院によっては退職願いを素直に受け取らないだけでなく、嫌がらせとして有給休暇取得を妨げる行為を行う場合があります。
十分に余裕を持って有給休暇取得意思を病院側へ伝えて、退職前に有給休暇を使い切ろうとしても平行線の状態が続くならば労基へ有給休暇取得を妨害されていると相談することも必要です。
労働基準監督署へ相談すると病院側へ有給休暇取得権利が労働者側にあることを伝えてくれます。
そして、労働者から有給休暇取得を希望されたら時季変更権を行使できても有給休暇取得そのものは拒否できないことも労働基準監督署から伝えてもらえます。
時季変更権を行使できるだけの期間的な余裕を持って退職願いと共に有給休暇取得申請を行うことが、退職前に有給休暇を使い切るコツです。