NICU看護師の役割とは
NICU看護師の役割は、予定日より早く出生した2500グラム未満の低出生体重児や、先天性心疾患などの病気を抱えたハイリスクの新生児のケアを行うことです。
NICUとは、早産児や低体重の新生児、未熟児のケアを行う新生児集中治療管理室のことです。
GCUというものもあり、新生児回復治療室のことで、NICUでの治療によって状態が安定してきた新生児のケアを引き続き行う治療室です。
NICU看護師の仕事内容
NICU看護師は、どんな仕事をしているのでしょうか。
- 新生児のバイタルチェック
- 医師の処置の介助
- 人工呼吸器や点滴などの薬剤の管理
- 数時間おきのミルク
- オムツ交換
- 両親の精神的ケア
日常の業務として、新生児のバイタルチェック、医師の処置の介助、人工呼吸器や点滴などの薬剤の管理、そして数時間おきにミルクをあげ、オムツ交換などをこなします。
体温の検査結果や、モニターに少しでも変化があれば医師に報告し、指示を仰ぎます。
また、出産後すぐに赤ちゃんが入院となってしまうと、母親も父親もとても不安な気持ちとなります。
自分の子供がなにか障害の可能性持って生まれてしまった場合、自分を責めるお母さんも多くいます。
そのためNICU看護師は、我が子が生まれてすぐNICUに入ることになって赤ちゃんと引き離された両親に対する精神的ケアを受け持つことになります。
最終的な看護目標としては新生児がNICUを出て、両親の手で育てられるくらいに成長した状態でお返しすることです。
NICUで働く看護師の本音とは
NICU内は人工呼吸器やモニター類が常に作動していて、アラームが頻繁になる非常に緊迫した雰囲気の中で仕事をしなければなりません。
その独特な雰囲気が嫌いで辞めたい人も少なくありません。
冷静な判断が求められる点ではICUなどと変わりませんが、保育器が並び、全体的に音量や光量を落とした雰囲気は慣れるまで時間がかかるかもしれません。
三交代制の所が多く夜勤も多くなりがちなので、精神的肉体的に辛いというのが本音です。
1年目からNICUに配属されると成人が見られなくなる、オムツ交換や哺乳ばかりでスキルが身につかないと心配する人もいます。
しかし、NICUで勉強・経験した知識や姿勢は成人看護でも集中治療でも活かせることばかりなので、その点では心配することはありません。
NICU看護師に必要な資格とは
NICUで働く看護師に必要な資格というものはありませんが、重症の新生児に対応する機会も多く、必然的に日々の勉強が求められます。
大学や専門学校での勉強が必要な助産師の資格も必ずしも必要ではありません。
しかし、様々な資格を持っていることで周りからの見られ方や、自分に自信が持てること、手当による給料アップなど様々なメリットがあります。
新生児集中ケア認定看護師とは
NICUで働く看護師が取得可能な資格としては新生児集中ケアの認定看護師の資格があります。
ハイリスクの新生児の病態を理解し、その変化を予測して重篤化を防ぐことが求められ、発育を促進するケアや親子関係の形成のための支援を進めていくのが新生児集中ケア認定看護師です。
新生児集中ケア認定看護師の資格は1年目で取りたいと考えていても、取得条件があるためすぐに取得することはできません。
資格取得条件
看護師として最低5年の勤務(内3年NICUでの実務研)
↓
認定施設での約800時間のカリキュラム修了
↓
認定看護師認定審査の合格
↓
新生児集中ケア認定看護師資格取得
新生児集中ケア認定看護師の資格は看護師として最低5年の勤務と、その内3年NICUでの実務研修が必要とされます。
認定施設で約800時間のカリキュラムが求められ、修了したら認定看護師認定審査をパスして新生児集中ケア認定看護師になることができます。
また、毎5年の資格更新審査があるため、認定看護師を保持している貴重な人材はNICUで非常に重宝されることになります。
新生児蘇生法の資格とは
それ以外の資格としては、日本周産期・新生児医学会が認定する新生児のBLSにあたるNCPRという新生児の蘇生法の資格があります。
こちらは新生児の蘇生にあたる際に必要不可欠なものなので、NICUに配属されたら必然的に勉強することになります。
NICUで働く看護師は、独特な医療機器を使用することもあります。
医療機器も進歩していき、常に勉強する必要があります。
そのため、勉強することが嫌いという人にとってNICU看護師は辛い仕事といえるでしょう。
NICU看護師の給料
NICUに配属された新卒の年収は一般病棟で働く看護師と変わりません。
NICU看護師の基本給相場
基本給は他部署と同じで新卒が20万程度、経験を積んで勤務期間が長くなればその分基本給は上がっていくシステムで、ベテランで25万程度が相場ではないでしょうか。
その他に、役職が付けばさらに給料はプラスされます。
ただし、NICUで働く看護師にはいろいろな名目で手当てがつき、結果的に他の病棟の看護師より1万から2万円は給料が多くなるのが一般的です。
例えば、他の病棟に比べると三交代勤務のNICUでは数回分多く夜勤に入ることになるので、その分夜勤手当は多くつきます。
特殊業務手当や認定看護師資格でさらに給料アップも!
また、病院によっては集中治療室で働く看護師に対して特殊業務手当をつけるところも少なくありません。
NICUで働く看護師もこの特殊手当によって給料が増えることになります。
なお、病院によって手当の有無や金額もさまざまですので、働く前に確認しておきましょう。
NICU看護師になるには特別な資格は必要ありません。
しかし、先ほど紹介した新生児集中ケア認定看護師の資格を持っていると、資格手当がつきさらに給料は増えます。
NICU看護師は夜勤が多く、新生児に対してはかなり細やかなケアが求められたり負担が多かったりするため、やりがいはありますが、辛いと感じることも多い仕事です。
その分他の病棟の看護師よりも金銭的な面では優遇されています。
NICU看護師の悩み&デメリット
NICU看護師の悩みにはどんなものがあるのでしょうか。
ここではNICU看護師辞めたいと思ってしまう原因となることを紹介していきます。
悩み1 独特の雰囲気がある職場
NICU内の雰囲気はかなり独特なものがあります。
NICU内では大声で笑ったり話したりすることができないので、明るい職場を求める人には耐えられないかもしれません。
新卒でも希望することでNICU看護師になることができます。
しかし、1年目で配属されるとその独特の雰囲気が嫌いで、早い段階で病棟異動を願い出る新人はいます。
ただ、逆にある程度慣れてくると、赤ちゃんの保育器を回る程度でずっと歩きっぱなしではないため、その点は楽と感じる場合もあります。
体力的な面では負担が少なく、人と話さなくても苦にならない人なら、かわいい赤ちゃんを見ながらずっと仕事できるので、他の病棟には絶対行きたくないと本音を漏らす看護師もいます。
悩み2 他の病棟の患者を見られなくなるのではという不安
また、よく聞くのは転職する際に他の病棟の患者を見られなくなるのでは、という悩みです。
確かに、小さな新生児と体位変換も一人では大変な成人とでは全く勝手が違います。
新生児では細やかなケアが必要で精神的な負担が大きいのに対し、成人では体力的な負担が新生児とは比べものにならないところが大きな違いです。
それをデメリットに感じるかどうかは人それぞれですが、ICUやNICUで集中治療を学んだ看護師は転職したり他の病棟に行ったりしてもいろんな場面で活躍する機会が多いでしょう。
不規則な勤務や緊張感が求められる職場の雰囲気に慣れれば、やりがいを感じる職場だと言えます。
悩み3 退院後の赤ちゃんの様子がわからない
NICUで働く看護師には、赤ちゃんが退院した後の様子がわかりません。
新生児が元気な生活を送れているのかがわからないので、元気になった姿を見てやりがいを感じるということは少ないでしょう。
しかし、電話での相談、定期的な検診によって赤ちゃんの状態を知ることができる場合もあります。
悩み4 人間関係が悪くなりやすい
NICUで働く看護師は、常に緊張感によってピリピリとした空気になりやすいです。
24時間細心の注意を払い、迅速に様々な処置をしていく必要があります。
ミスをすることができない緊張感によるストレスから、人間関係がうまくいかなくなってしまうことが多いようです。
悩み5 赤ちゃんの死
NICUで治療を行う赤ちゃんが亡くなってしまう場合もあります。
さっきまで元気だった赤ちゃんの容態が急に変わってしまうこともあります。
長く勤めていても、回数を経験しても、負担を感じないようにすることは難しいかもしれません。
しかし、ずっとつらい気持ちを引きずってしまう場合、長くNICU看護師として働き続けることは難しいかもしれません。
前向きな強い心を持って、赤ちゃんや両親と接することができる人には向いていると言えます。
悩み6 両親のケアが大変
NICU看護師の仕事の一つとして、両親に対してのケアもあります。
前述しましたが、出産したあとすぐに赤ちゃんが入院となってしまうのは、両親の精神的なショックはとても大きなものです。
「会いたい」「抱っこしたい」という気持ちだけでなく、「自分のせいで赤ちゃんに辛い思いをさせてしまっている」と自己嫌悪に陥ってしまうのです。
赤ちゃんの両親の精神的なケアをしていくには、高いコミュニケーション能力は必須でしょう。
また、家族の中には看護師に強く当たる人、きつい言葉を発言する人がいる場合もあるでしょう。
そのため、きつい態度の人に対して仕事と割り切ることができる精神力なども必要なことと言えるでしょう。
悩み7 夜勤が多い
NICUでは24時間体制で赤ちゃんの容態に気を付ける必要があるため夜勤があります。
夜勤はやることがなかったり、少ない人数できるといった仕事ではないため、看護師の数は日勤と同じだけ必要となります。
そのため、夜勤の回数も多くなります。
病院によってシフトに違いはありますが、主に2交代制と3交代制となります。
ミスができない緊張感に加え、肉体的にもきつい夜勤をしなくてはならないことが耐えられず、辞めたいと考えてしまうことも多いようです。
しかし一般病棟と違い、ナースコールにイライラさせられるということはありません。
NICU看護師のやりがい&メリット
次に、NICU看護師のやりがいについて紹介していきます。
やりがい1 赤ちゃんの成長、退院する時の喜びの瞬間に立ち会えること
NICUの看護師のやりがいは、小さく弱々しかった赤ちゃんが自分たちのケアでしっかり成長し、自分でミルクを飲めるようになり、保育器から出て両親に抱かれて退院する時の喜びの瞬間に立ち会えることではないでしょうか。
これは他の病棟にはない特別な瞬間で、初めて担当した赤ちゃんが退院する時には、涙を流す看護師が少なくありません。
それほどにどんどん成長して元気になっていく赤ちゃんたちは、日々の疲れを癒し、やりがいを感じさせてくれます。
新生児と触れ合うことで、自分の中の母性本能に気づいたと本音を言う看護師もいるくらいです。
やりがい2 看護技術の向上や仕事を通じて人間的にも成長できる
また、NICUで働くと日々の勉強で得た知識がダイレクトに自分の看護技術の向上に役立つので、勉強熱心な人にとっては最高の環境だと言えます。
NICUでは一般病棟では経験することができない症例の知識や医療スキルが身に着けられます。
また、新しく高度な医療機器を使用することもあるので、医療機器についての操作技術・知識を身に着けていくことができます。
NICUはその知識や技術が新生児の命に直結する非常に責任の重い仕事ですが、成長し元気になっていく赤ちゃんを傍で看護できるやりがいは何ものにも代えられません。
感動的な場面に立ち会うことも多く、NICUに慣れてしまえばずっと新生児に携わっていたいという看護師が多いのも頷けます。
新卒でNICU看護師となった場合、最初の1年目は想像していたものと違い辛いと感じ、辞めたいと考えてしまうかもしれません。
しかし、給料面のメリットややりがいの部分を考えると、仕事を通じて人間的にも成長できるNICUの看護師は魅力的な仕事だと言えます。