介護職員初任者研修とは?
介護の現場で働く場合、職員は主に生活援助や身体介護という業務を行います。
生活援助とは
生活援助とは、高齢者などの介護サービス利用者の衣類を洗濯したり、居室を清掃したりすることです。
この業務には介護資格が必要ありません。
身体介護とは
身体介護は、利用者の移動や入浴のほか食事や排せつなど利用者の身体に触れる介助を指します。
身体介護を行うには、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士といった資格が必要です。
最初に取得すべき資格
介護職員初任者研修は、介護資格の中でも取得が簡単な初級資格で、介護職員として働くために最初に取得する資格だと言ってよいでしょう。
介護職員初任者研修は、かつてホームヘルパー2級という名で呼ばれた資格に該当します。
ホームヘルパー2級の学習項目に認知症に関する内容が追加されるなど、介護の現状に合わせてカリキュラムの充実が図られています。
ホームヘルパー2級は無試験で取得できましたが、介護職員初任者研修の資格を取得するには、試験に合格しなければなりません。
ちなみに看護師の場合は看護師免許を取得していることで、介護職員初任者研修を修了したものとみなされています。
介護職に就く際に有利になる
無資格でも介護職に就くことは可能ではあるものの、この資格があれば、ハローワークで介護の仕事を探す際にも有利となります。
ハローワークでは、介護職員初任者研修の資格取得講座を無料で受けられる研修を紹介してくれることもあります。
介護職員初任者研修の内容
介護職員初任者研修のカリキュラムは130時間に及び、下記のような学習内容となります。
介護の基本
介護職の職務の理解から始まり、介護における尊厳の保持・自立支援に加え、介護におけるコミュニケーション技術といった介護の基本について学びます。
介護現場で起こりがちな虐待やネグレクトといった問題を防ぐためにも、こうした項目の理解が欠かせないでしょう。
介護サービスを理解する
広い視点から介護サービスを理解するため、介護・福祉サービスの理解と医療の連携に関しても学習しなければなりません。
それから、老化・認知症・障害の理解を深めた後、心と身体のしくみと生活支援を学び、身体介護と生活援助についてしっかりと知識を習得するのです。
特に、認知症については、徘徊や誤嚥・誤飲の原因ともなりうるので、介護現場での事故を防ぐうえで深い理解が必要です。
実技指導
さらに、こうした知識を座学で学ぶだけでなく、実習に参加して実技指導を受けなければなりません。
実技指導では、利用者の身体に負担を与えず、心理的ストレスをかけない効率的な身体の使い方を学べるでしょう。
体幹を上手に使った介助法を習得できれば、利用者をスムーズに介助できるだけでなく、介護職員の腰や膝を痛めることもありません。
実習に参加して身体の動かし方を学べば、全てのカリキュラムを修了し、資格認定試験を受けることになります。
介護職員初任者研修の費用
介護職員初任者研修の講座を受講するには、受講料がかかります。
受講料は、3万円という安いものから15万円という高額のものまで様々です。
費用を補助してくれる制度がある
先述した通り、ハローワークでは無料の講習を紹介してくれることもありますが、一般的には民間資格取得スクールの授業料を支払わなければなりません。
ただし、指定された条件に該当すれば、介護職員初任者研修の費用を一部補助してもらえる制度があります。
一般教育訓練給付金制度という制度があり、これは就職に必要な教育に関する費用の20パーセント、上限10万円までを補助する制度です。
補助対象者の条件
補助対象者は、原則として雇用保険の被保険者となります。
しかし、雇用保険の被保険者資格を喪失した後、下記のような条件を満たしていれば、雇用保険の被保険者でなくても補助を受けられるでしょう。
・受講開始日まで1年以内である
・前回の教育訓練給付金を受給してから受講開始日前までに3年以上の期間が経っている
ただし、講座に申し込んだだけで補助を受けられるわけではありません。
講座を受講し、実習にも参加して全てのカリキュラムを修了した後、試験に合格するなどの条件が課せられているのです。
介護職員初任者研修資格取得支援事業
一般教育訓練給付金制度の他に、介護職員初任者研修資格取得支援事業という補助金制度もあります。
これは各自治体が地域の介護人材確保・育成のため設けている支援制度で、自治体により補助要件や補助金の額が異なります。
▼介護職員初任者研修の費用についての記事はこちら
働きながら介護職員初任者研修は受けれる?
仕事をこなしながら、介護職員初任者研修の講座を受講することは可能でしょうか?
様々な通学コースが用意されている
介護職員初任者研修は民間資格なので、民間の介護資格取得スクールが、様々な通学コースを用意しています。
短期間集中講座であれば、1ヶ月程度で資格を取得することも難しくありません。
また、土日や休日に限定した通学コースもあれば、夜間に開講している講座もあります。
自宅や職場から通いやすいスクールがあったら、通学コースで短期間取得を目指すことが可能と言えるでしょう。
介護職員初任者研修の上級資格とされる介護福祉士実務者研修という資格もありますが、初任者研修の方が費用も時間も少なく済みます。
通信講座も利用できる
多忙な職務のため通学が困難な人なら、通信講座を利用することもできます。
通信講座であれば、自宅やカフェなどネット環境の整った場所でオンライン授業を受講できるので、通学の手間が省けてスキマ時間を利用して勉強できるでしょう。
通学する必要はある
介護職員初任者研修の全カリキュラムを通信講座だけで修了することはできません。
カリキュラムの130時間のうち、自宅学習が認められているのは40.5時間だけです。
したがって、通信講座を選択しても、89.5時間は通学で学ばなければなりません。
また、通信講座では通学コースのような短期集中学習が難しいので、資格取得までに通学コースより時間がかかるでしょう。
介護職員初任者研修の試験の難易度
介護職員初任者研修の資格取得には、まず筆記試験の合格が必要です。
筆記試験の合格ライン
筆記試験は記述式問題と選択式問題から構成され、出題数が32問以上と決められています。
筆記試験に合格するには、100点中70点以上得点しなければなりません。
介護職員初任者研修は、介護福祉士のような国家資格ではなく民間資格のため、試験内容は全国統一ではなく、民間のスクールによって異なります。
ほとんど落ちることはない
試験内容は、カリキュラムで勉強した項目から出題されるため、全課程を修了した人であれば、試験に落ちたという事例はほとんどありません。
合格率は不明ですが、受講生が途中で放棄しない限り100パーセントに近いと言っても過言ではないでしょう。
万一不合格でも、ほとんどのスクールで追試を行っており、追試により受講者全員が合格することことも珍しくありません。
不安であれば、試験日の前にスクールで言われたポイントを復習しておきましょう。
実技試験も再試験ができる
筆記試験に加えて、歩行・移乗をはじめとした食事・排せつの介助について実施される実技試験にも合格しなければなりません。
しかし、声かけを怠るなどよほどの失敗がない限り、不合格となることはないでしょう。
実技試験で不合格となっても、補講や再試験により合格できます。
筆記試験と実技試験は両方とも、受講期間内であれば何回でも再試験にチャレンジすることが可能です。