医療療養型病床とは?
医療療養型病床は、慢性的な疾病がある患者、急性期から寛解し長期療養が必要な患者に対して、医療的ケアやリハビリなどを行う医療保険が適応された病院施設です。
医療法には下記のような5つの病床種別があります。
・療養病床
・一般病床
・感染症病床
・結核病床
・精神病床
療養病床は、病床面積や医師・看護師などの配置数が明確に定められています。
療養病床には、医療的ケアが行われる医療療養型病床と、介護サポートが提供される介護療養病棟があり、それぞれ特性に応じた看護・介護を行っています。
医療区分3
また、医療療養型病床は、厚生労働省で定められた1~3の医療区分とADL区分により、必要となる処置や診療報酬が分類されています。
医療区分3は下記のようなことなどを行っていて、常時監視が必要な患者や感染隔離室での管理者が対象です。
・人工呼吸器
・気管挿管
・中心静脈栄養
・24時間点滴
医療区分2
医療区分2は下記のようなことに対し、経腸栄養・喀痰吸引・頻回の血糖検査などの医療処置を行っています。
・筋ジストロフィー
・多発性硬化症
・パーキンソン病
・疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍
医療区分1
医療区分1は医療区分2~3に分類されない患者が対象となり、自宅療養が難しい患者の医療・看護を提供しています。
ADL区分は、食事や排せつなど4つの日常生活を8つの自立度で点数評価して、合計得点で1~3に分類しなくてはなりません。
医療療養型病床の設置基準
全国には約27万床の医療療養病床があり、医療法に基づき下記のことについて設置基準が設けられています。
・病床面積
・病室定員
・設備や施設
病床面積と病室定員
医療療養病床は、病床面積6.4平方メートルに対して、下記のような条件が必要になります。
・病室に入院できる定員は4人以内
・廊下幅は片側廊下1.8メートル以上
・中廊下は2.7メートル以上
一般病床や感染症病床・結核病床の場合は、病床面積6.4平方メートルに対し、病室定員は5人以上でも可能となっており、医療療養病床は病床スペースが広く設定されています。
設備や施設
また、医療療養病床には下記のような、診療に必要な施設や検査対応を行うや施設が必要です。
・診察室
・処置室
・調剤所
・臨床検査室
・エックス線装置などの設備
必置施設はその他にも、下記のようなサービスを提供するためのものもあります。
・給食施設
・洗濯施設
・患者が使用する談話室
・食堂
・浴室
また、機能訓練室も必置施設となっています。
機能訓練室は、訓練に必要な機器や器具を完備した上で、訓練を行う広さを確保するために40平方メートル以上のスペースを設けることが求められています。
医療従事者の配置人数
その他、医療療養病床は医療従事者の配置人数も定められています。
必要な配置人数は下記のようになっています。
・患者20人に対して看護師・看護補助者を各1名
・患者48人に対して医師が1名
理学療法士や作業療法士は機能訓練など、病院で行われているリハビリの状況に合わせて必要数配置することになります。
医療療養病床 ・介護療養病床との違い
医療療養病床は、長期療養を行う患者に対して医療保険を利用して医療的ケアを行う施設です。
介護療養病床とは
介護療養病床は、要介護認定を受けた患者に対して、介護保険を利用して介護サービスと医療的ケアを提供する施設になります。
介護保険が適応される施設には小規模多機能型居宅介護やグループホームなど在宅扱いとなる施設もあります。
介護療養病床は要介護度の高い患者の対応を行っており、特別養護老人ホームと同じように要介護者のサポートを行っている公的施設です。
一般的な介護施設と異なる点
一般的な介護施設と異なる点は、病院施設で看護師など医療従事者が主体となり介護を行っているため、高度な医療的処置を受けることができることです。
下記のような医療的ケアが必要な要介護者に手厚い看護と介護サービスを提供しています。
・気管挿管
・中心静脈栄養
・インスリン治療
・たん吸引
介護療養病床の特徴
医療療養病床に入院している患者の平均年齢が81歳、介護療養病床は84歳と年齢層が高く、医療区分1の患者の構成比が多くなっているのも特徴です。
要介護度が高い患者を受け入れているため、患者6人に対して看護師と介護士が1名と、医療療養病床より医療従事者の受け持ち人数が少なく、より綿密な介護が行われています。
また、介護療養病床では自宅療養を希望する人のために、理学療法士や作業療法士による回復期リハビリなどのサポートも充実しています。
基本的には多床室ですが、個室のようなプライベート空間を確保できる、ユニット型個室的多床室などを取り入れた病院もあります。
医療療養型病床の費用とは
医療療養型病床の費用は、1~3の医療区分とADL区分によって入院基本料の点数が決められています。
自己負担額
また、自己負担額は所得の多い人は3割、その他の人は1割、低所得者はさらに安い基本料が適応されます。
例えば65歳以上で医療区分3・ADL区分3となった時には、下記のような自己負担額となります。
・1カ月あたりの自己負担額は55,740円
・市町村民税非課税世帯で年収が80万円以下の低所得1の人は15,000円
医療区分2・ADL区分2の場合
・一般の人は42,530円
・低所得1の人は15,000円
医療区分1・ADL区分1の場合
・一般の人は24,830円
・低所得1の人は15,000円
食事療養費・生活療養費
医療療養型病床では入院基本料の他に、食事療養費または生活療養費も必要になります。
1カ月の食事療養費(1日3食)の負担額は下記のようになっています。
・一般の人は42,780円
・低所得1の人は1,380円
1カ月の生活療養費(1日3食)の負担額は下記のようになっています。
・一般の人は54,250円
・低所得1の人は9,300円
治療費が払えない場合
入院期間が長くなった時や、高額医療を受けた時など治療費が払えない場合には、自治体に相談して公的支援制度を受けるようにしましょう。
入院費の支払いをサポートする制度には、一定額の医療費の支払いを払い戻してくれる高額療養費制度や、一時的に治療にかかった費用を借りられる高額医療貸付制度などがあります。
医療療養型病床は廃止される?
2023年には療養病床が廃止され、医療療養病床は一部の施設が残されることが決定しています。
療養病床が廃止される理由
療養病床は慢性的な治療が必要な患者の受け皿を担っていましたが、厚生労働省の調査で医療療養病床・介護療養病床で患者が混在していることが問題視されていました。
医療的ケアの必要性が低い患者を介護施設に移し、医療的ケアの必要性が高い患者を従来の医療療養病床に集約し、高齢者の状態に即した適切なサービスを提供することが求められています。
また、各施設で専門的な看護を行うことで効率的に業務遂行ができるため、慢性的な人材不足を解消することも期待されています。
新たな制度
新たな制度では、従来の介護療養病床に相当する1型、介護老人保健施設に相当する2型、医療機関と有料老人ホームに相当する医療外付け型が設けられました。
現在の医療療養病床の約半数が新たな施設へと転換し、残った医療療養病床で専門的に医療的ケアを続けていくことになります。
患者20人に対して看護師1名以上、医療区分2~3の患者割合を50%以上にするなど、新たな医療療養病床の施設基準も定められています。
入院患者の移動や施設の転換に関わる対応が間に合っていない病院には経過措置が設けられています。