精神対話士とは?
精神対話士とは、対話によって依頼者の心のケアを行うメンタルケアの専門家です。
精神対話士の仕事内容
依頼者の話を聴くことでその人が抱える不安や悩み、寂しさに寄り添い、依頼者が前向きに生活できるようサポートします。
臨床心理士や心理カウンセラーは、カウンセリングによって悩みを解決するための方法や、悩みとうまく付き合っていく方法を提案してくれますが、精神対話士は心理療法などの治療行為は行いません。
傾聴や共感の姿勢で依頼者の話を聴き、相手の心の重荷を下ろすお手伝いをするのが精神対話士の仕事です。
精神対話士の活躍の場
精神対話士の仕事は、彼らが所属するメンタルケア協会の依頼を受け、依頼者のもとへ出向くところからはじまります。
メンタルケア協会ではこれを「精神対話士派遣(メンタルデリバリー)」と呼んでいます。
精神対話士の派遣先として主に下記の場所が挙げられます。
・個人宅
・学校
・一般企業
・福祉施設
・病院
ときには、大きな災害に見舞われた被災地に出向き活動することもあります。
対話の内容
派遣先では、原則として週1回のペースで合計4回対話による心のケアを行います。
1回の対話時間は80分です。
対話の際に語られる内容は、派遣先や依頼者によって異なります。
学校に派遣される場合は不登校やいじめの問題、病院や介護施設に派遣される場合は高齢者の孤独や長期入院への不安などの悩みを聴くのが中心です。
この他にも、リストラによる将来への不安やひきこもりの問題、被災者のPTSDに向き合うこともあります。
精神対話士になるには?
精神対話士として活躍するには、民間資格である「メンタルケア・スペシャリスト」を取得する必要があります。
資格を取得する条件
この資格は、一般財団法人メンタルケア協会が1993年に創設したもので、同協会が開催する「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」を修了することで受験資格が得られます。
メンタルケア・スペシャリスト養成講座を受けるには、学歴や職歴など特別な資格は必要ありません。
つまり、大学や専門職大学を修了していなくても、やる気と受講料さえあれば誰でも受講可能ということです。
現に、現役の高校生から80歳を超える高齢者まで幅広い世代がこの講座を受け、精神対話士として活躍中です。
養成講座の会場
メンタルケア・スペシャリスト養成講座の会場は全国の主要都市にあります。
- 札幌会場
- 仙台会場
- 金沢会場
- 名古屋会場
- 大阪会場
- 東京会場
- 福岡会場
講座は主に土・日・祝日に開催されているようです。
資格取得の流れ
資格取得までの流れは、まず基礎課程全5日間(15講座)、実践課程全3日間(7講座)を受講します。
両課程を修了後に行われるレポート採点に合格すると、精神対話士選考試験が受けられます。
10名程度の集団面接と個人面接に合格すると、メンタルケア・スペシャリスト認定証が交付のされるのです。
そして、メンタルケア協会と業務委託契約を結ぶすることで、晴れて精神対話士として活動できるようになります。
試験の合格率
試験の合格率は、レポート採点が両課程とも80%、選考試験が15%で、資格取得の難易度は比較的高いものとなっています。
しかし、万が一それぞれの試験に落ちた場合でも再受験できます。
ただし、レポート採点で不合格になった場合には直前の課程の再受講が、選考試験で不合格になった場合には実践過程の再受講が必要です。
試験の合格率が低い理由
精神対話士の資格は、他のメンタル系の資格と比較しても難易度が高い資格と言えます。
その理由として、10名前後で行う集団面接と、個人面接に合格しなければならないことが挙げられます。
どのような内容の面接を行っているかはわかりませんが、勉強によって理論を理解していたり、暗記をすれば合格できるものではないと言えるでしょう。
依頼者の心のケアを行う対話の技術は、誰でも簡単に実践できるものではありません。
それが試験の合格が難しくなっている要因と考えられます。
養成講座の受講料
メンタルケア・スペシャリスト養成講座の受講料は下記のようになっています。
基礎課程…136,200円(税込み)
実践課程…62,800円(税込み)
合計…199,000円
これにはシラバスやテキストの代金も含まれます。
ちなみに選考試験の受験料は無料です。
しかし、選考試験で不合格になった場合には実践課程を再受講する必要あるので、もう一度受講料を支払う必要があります。
精神対話士の収入はどれくらい?
単刀直入にいうと、精神対話士の平均給料はあまり高くありません。
精神対話士の報酬額
精神対話士の収入は、対話を行う依頼者の数によって変わってきます。
メンタルケア協会に所属して依頼者のもとに派遣される形で働いている場合、1回の対話で得られる報酬は4,000円程度です。
精神対話士の仕事は、週1回ペースでの対話を4回行うのが一般的なので、依頼者1人から得られる報酬は16,000円ほどです。
精神対話士の給料
仕事の数を増やしたとしても、依頼者10人を担当したところで1カ月16万円程度の収入にしかなりません。
現に、精神対話士の平均給与は初任給で18~20万円です。
資格を取得したからといって、精神対話士の資格では高給は望めないのです。
看護師が取得するメリット
精神対話士として就職するなら、その後のキャリアアップを見越し、別のメンタルヘルス関連の資格取得を目指すのが懸命でしょう。
しかし、看護師が自分の仕事に生かすために精神対話士の資格を取る場合、少々話が変わってきます。
なぜなら、精神対話士資格を取得することで、看護師の給料に能力給が上乗せされる可能性があるからです。
精神対話士の資格を持つ看護師は、資格の取得を通じて不安や悩みを抱える人に寄り添う術を身に付け、治療や手術に臨む患者さんをきめ細かくサポートできるものと捉えられます。
精神対話士の需要とは
精神対話士試験に合格した人に対する需要は年々高まっています。
需要が高まっている背景
この背景には、生活環境の変化によるメンタルヘルスへの関心の高まりがあります。
たとえば、昭和の時代はいくつかの世代がひとつ屋根の下で生活し、仕事や子育ての悩みを家族内で共有し解決を図ってきました。
しかし、夫婦のみや夫婦と子供のみで生活する核家族が一般的になった現代では、自身の悩みを上の世代に気軽に相談できなくなっています。
それにともない、仕事や育児で悩みを抱えてしまう人が増えてきました。
老後への不安
また、医療の進歩によって平均寿命は緩やかに延び続け、元号が令和に変わってからは「人生100年時代」というワードがさまざまなメディアで取り上げられています。
その一方で、定年退職から命が尽きるまでの期間が延びることで、自身の健康や老後資金への不安を抱える人が多くなっているのも事実です。
不安を抱える人は増えている
これら以外にも、子供のいじめや不登校、職場のストレスや働きすぎなど、現代社会に生きる人々はさまざまな問題を抱えています。
このような問題を受けて、企業や地方自治体などでメンタルケアが重要視されるようになり、精神対話士をはじめとするメンタルヘルスの専門家への需要が高まっているのです。
精神対話士は、対話を通して依頼者の心を前向きにする技術を生かして、企業や学校、被災地などで活動しています。
精神対話士のメリット&デメリット
精神対話士最大のメリットは、やる気があれば誰でも取得が目指せることです。
メリット1 誰でも取得できる
前述したとおり、精神対話士資格を取るために必須である養成講座は、学歴や職歴に関係なく誰でも受けられます。
他のメンタルヘルス関連の資格は、受験資格として大学の卒業や実務経験を求められるのが一般的です。
たとえば、臨床心理士は指定の大学院または専門職大学の修了が必要です。
また、公認心理師は4年制大学での指定科目の履修後、大学院の修了や実務経験などが求められます。
その一方で、精神対話士は誰でも取得できるので、心理学系大学を卒業していない人や高卒の人で、「メンタルヘルスに関わる仕事がしたい」という人に向いています。
メリット2 看護師としてのスキルアップ
また、スキルアップにつながることも精神対話士資格取得のメリットです。
看護師の仕事にはコミュニケーションが付きものです。
精神対話士の資格取得を目指すなかで、悩みや不安を抱える人との接し方を身に付ければ、「親身になってくれる看護師」として評判がアップするでしょう。
デメリット1 給料が上がらない
しかし、精神対話士の資格にもデメリットはあります。
それは、お給料の話でも触れましたが、この資格だけで高給を得ることは難しいということです。
精神対話士の仕事は、看護師のように経験を積むほどお給料がアップしていくわけではなく、どれだけ仕事をしたかによってお給料が決まるからです。
派遣による仕事
精神対話士の仕事はメンタルケア協会からの依頼を受け、依頼者のもとへ派遣されますが、住んでいる地域によって派遣先が少ない場合もあるのです。
1回の対話で得られる報酬はが4,000円程度ということもあり、それだけで生計を立てていくのは厳しい職業と言えるでしょう。
デメリット2 治療を行うことができない
また、看護師がキャリアアップとして精神対話士資格を取得する場合にも注意点があります。
それは、この資格を取得したからといって、メンタルヘルスに関する専門的な活動はできないということです。
精神対話士は臨床心理士などと違って治療は行えないので、資格を取ったからといって看護師としての働き方に変化は生まれません。
デメリット3 資格取得にかかる時間
メンタルケア・スペシャリスト養成講座は複数日に渡ります。
通信講座も行っているわけではないため、全国の主要都市にある会場へ直接行く必要があります。
デメリット4 養成講座にかかる受講料
前述しましたが、メンタルケア・スペシャリスト養成講座を受けるには最低でも199,000円の費用がかかります。
それ加えて、限られた会場で行われる講座を受ける場合には、交通費などもかかるでしょう。