ナイチンゲール看護師とは
ナイチンゲール看護師とはどんな存在なのでしょうか。
ナイチンゲール看護師とは
ナイチンゲール看護師とは、患者をしっかりと観察して生活を整えていきながら、患者自身の自然治癒力を高めてくれる存在である看護師を指します。
イギリス出身の看護師でもあり、統計学者でもあるフローレンス・ナイチンゲールから由来されています。
一般的に言われている看護師の仕事は診療の補助をすることです。
ですが、ナイチンゲールの看護理論をまとめた著書にあたる看護覚え書では、看護師として真に求められていることが記載されています。
看護覚え書の定義/健康とは
看護覚え書にあるナイチンゲールの言葉を引用すると、下記のように看護を定義付けています。
「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択し管理すること、こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味すべきである。」
同じく看護覚え書には健康については下記のように述べています。
「健康とは良い状態をさすだけではなく、われわれが持てる力を充分に活用できている状態をさす。」
看護とは臨機応変に対応できる観察力が大切
ナイチンゲール看護師はただ淡々と看護師の業務をこなすわけではありません。
患者の心に寄り添いながら、生きる力を患者に与えて生命力の向上に努めます。
そのためには、看護という仕事を単純なルーチンワークではなく、臨機応変に対応できる観察力が求められます。
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ナイチンゲール看護師像&覚え書の要点とは
ナイチンゲールが著した看護覚え書には、ナイチンゲールが理想とする看護師像について記載がされています。
【看護覚え書】13の項目
看護覚え書には要約13と呼ばれる13個の項目が患者の生命力を高める環境を調整する営みだと唱えられています。
- 換気と暖房(患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、屋外の空気と同じ清浄さに保つこと)
- 住居の健康(きれいな空気と水、下水溝の整備や室内への採光等に気を配る)
- 小管理(自分がその場にいなくても、物事が整然と行われる環境を整える。)
- 物音(騒音や内緒話等の不必要な物音は患者に不安を与えるため取り除く)
- 変化(良い環境の変化が気分転換となり回復へつながる)
- 食事(体調等に合わせて食べられるようにする)
- 食物(栄養バランスや患者の容態に合わせた食べ物を与えること)
- ベットと寝具(小まめにシーツ交換をする 肌触り等患者に合った寝具であること)
- 陽光(陽光は健康維持や回復に必要なもの)
- 部屋と壁の清潔(小まめに掃除を行い清潔を保つ)
- からだの清潔(体を拭くと気持ちもすっきりして回復につながる)
- おせっかいな励ましと忠告(余計な話をして不安を与えてはいけない)
- 病人の観察(表情や顔色、排泄物などを観察して患者の体調がわかるようにする)
患者の生命力向上に欠かせない13個の項目として、換気と保温、住居の健康、小管理、物音、変化、食事、食物とは、ベットと寝具、陽光、部屋と壁の清潔、からだの清潔、おせっかいな励ましと忠告、病人の観察が挙げられます。
これらを要約すると、看護師として目指す上で必要となることは、患者の身の回りの環境や患者自身の体及び心を細かく調整していかなければならないということです。
さらに、患者とコミュニケーションを交わすことでしっかりと観察を行わなければなりません。
例に7章要約解説すると、患者の生命力を高めていくためには、患者の健康状態に合わせた食物を選択することが大切です。
食物を選んで患者に与える際にも、常に観察力を研ぎ澄ましておかなければならないのです。
ナイチンゲールとして従軍した戦争
フローレンス・ナイチンゲールは看護師としてクリミア戦争に従軍しました。
「戦場の天使」と呼ばれたナイチンゲール
ナイチンゲールは傷ついた兵士たちに優しい態度で接したことで、兵士たちは体や心の傷が癒されたために、「戦場の天使」と呼ばれていたという逸話があります。
ナイチンゲールは戦場で看護師としての通常の業務から食事の世話、手が空いたら積極的に兵士とコミュニケーションを交わすなどと多くの仕事をこなしていきました。
ナイチンゲールの仕事ぶりは医療業界において大きな改革を引き起こすようになります。
ナイチンゲールの功績とは
また、ナイチンゲールがクリミア戦争に従軍した際にしたこととして大きいのが、医療において最初に統計学を導入したという功績でした。
負傷した兵士たちを治療する野戦病院を統計学的なアプローチから改良していき、病院での死亡率を大きく改善させました。
看護覚え書における13個の項目も、このような統計学的な見解で根拠付けて提唱されたものです。
当時は、病気に対する科学的な研究が十分に発達していなかったため、これまでのデータをまとめた統計は非常に役立ちました。
そして、この統計学的なアプローチによって、病院の治療において衛生管理を重視するようになり、以後の医療業界に大きな改革をもたらすようになります。
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ナイチンゲール看護師の教育とは
ナイチンゲールが看護覚え書を出版した年に、世界初となる看護婦養成所がイギリスのロンドンで設立されました。
ナイチンゲール看護師の教育
この看護婦養成所のナイチンゲール看護師を育てる教育スタイルをナイチンゲール方式と呼び、日本の看護教育にも浸透していくようになります。
ナイチンゲール看護師として、医療業界に従事する際には統計学の研究が欠かせません。
患者の容態に合わせた環境をつくるための観察力を鍛える根本は統計データにあるからです。
統計資料を読み解くだけではなく、自らが統計を作成できるようになることで患者の治癒により貢献することができます。
見習い制度とは
加えて、ナイチンゲール看護師になるための教育として用いられているのが「見習い制度」です。
この教育方法は、看護総監督の存在であるマトロンに見てもらいながら実際に医療現場で仕事をします。
その実践教育において学んだことや観察したことを記録させることによって科学的に看護に必要な知識を習得させました。
信頼のおける監督の下で看護師の仕事を評価してもらうシステムを取り入れたことで、秩序ある行動を学ばせることができたという点においても非常に有効な教育方法です。
このように、ナイチンゲール看護師の教育は科学的分析と秩序維持という看護師に欠かせない力を育てることができます。
ナイチンゲール訓練学校とは
ナイチンゲールが1860年に設立した看護の訓練学校として有名なのが、ナイチンゲール看護学校です。
正式名称は、フローレンス・ナイチンゲール看護師助産師学校であり、元々は聖トーマス病院の中で開校したものの、現在はロンドン大学群を構成するキングス・カレッジ・ロンドンにあります。
開校当初は校長先生の目に留まった15人の優秀な生徒によって授業を開始しました。
一般的な看護師や助産師になるための勉強をしていくだけではなく、看護教育や専門的な知識を習得するために欠かせない研修及び大学院で研究するための機会を設けています。
ナイチンゲール看護学校の合格率
ナイチンゲール看護学校があるキングス・カレッジ・ロンドンの偏差値は63前後とされていて、世界でも有数な大学の1つです。
キングス・カレッジ・ロンドンの合格率はおよそ10%程度しかないため、合格するのが非常に難しい大学とも言われています。
看護学部はキングス・カレッジ・ロンドンの最も大きな規模を持つ学部であり、卒業後の就職率も非常に高いことで有名です。
ナイチンゲールが訓練学校として看護学校を設立したことは世界中の医療業界において多くの影響を与えました。
日本も例外ではなく、群馬県の高崎市に「たかさき・ナイチンゲール学院」が設立され、ナイチンゲールが理想とする看護師像を承継しています。