乳児院で必要な資格とは
乳児院とは、保護者の入院や病気、虐待、育児放棄、貧困などさまざまな理由により家庭での生活が難しくなった乳児を一時的もしくは長期的に保護し、養育する児童福祉施設です。
基本的には乳児が対象ですが、場合によっては未就学児の保護や養育も行われています。
乳児院では、万全の体制で子どもたちをサポートするため、職員には専門的な資格や知識が求められます。
そのため乳児院では、国家資格や任用資格などを取得する必要がある職種が多くなっています。
それぞれの必要な資格にについて
乳児院で働く職員に必要な資格をそれぞれ紹介していきます。
医師、看護師、保育士、栄養士の国家資格
- 医師
- 看護師
- 保育士
- 栄養士
医師や看護師、保育士、栄養士などの国家資格が必要な職種は、それぞれの大学や短大、専門学校などの養成学校を卒業し、国家試験に合格しなければなりません。
社会福祉士、精神保健福祉士の国家資格or任用資格が必要
- 児童指導員
- 家庭支援相談員
- 里親支援相談員 等
児童指導員や家庭支援相談員、里親支援相談員などの職種には、社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格を持っている人や指定された専門課程を履修した人、2年もしくは3年以上の実務経験のある人に与えられる任用資格が必要になります。
心理学系の専門課程、集団心理療法の技術が必要
- 個別対応職員
- 心理療法担当職員 等
個別対応職員や心理療法担当職員は、心理学系の専門課程を履修していたり、個人及び集団心理療法の技術が必要であったりと、専門的な知識や技術がなければその職種に就くことができません。
資格なし
- 事務員
- 用務員
- 保育補助 等
乳児院の求人は、厚生労働省から定められている職員配置基準があり、有資格者の職種も多いのですが、資格なしでも働くことができる事務員や用務員、保育補助などの職種もあります。
乳児院とはどんな仕事なの?
乳児院とはどんな施設なのか、一日の流れや仕事内容から、その役割を解説していきます。
乳児院とは
先ほども説明しましたが、乳児院はさまざまな理由によって保護者との生活が困難となった乳児を保護し、養育を行う施設です。
乳児院の退所後
乳児院の退所後は下記のようなところに行くのが一般的です。
- 親元へ帰る
- 里親の元へ行く
- 児童養護施設へ行く
しかし、必要がある場合には3歳以上の子供も利用しています。
保育園との違い
乳児院は保育園と同じで、子供を預かり養育する施設です。
大きな違いは、乳児院は24時間体制で子供の養育を行っていることと、複雑な事情によって入所している子供が多いことです。
保育園は0~5歳児が利用できるのに対し、乳児院は原則として0~2歳の乳幼児となっています。
乳児院一日の流れ
乳児院での一日の流れについて紹介していきます。
一日の流れ
- 夜勤担当からの引き継ぎ
- 朝の健康チェック
- 朝食
- 自由保育、集団保育
- 昼食
- お昼寝
- おやつ
- 午後の遊び
- 入浴
- 夕食
- 就寝
- 夜勤担当への引継ぎ
乳児院の一日は、夜勤担当からの引き継ぎ、子どもの起床時の朝の健康チェック、朝食、自由保育や集団保育での遊び、昼食、お昼寝、おやつ、午後の遊び、入浴、夕食、就寝、夜勤担当への引き継ぎという流れになります。
年齢によっては、日中はもちろん夜間にもおむつ替えやミルクなどが必要です。
乳児院では、それぞれの職種が役割分担し、連携して子どもを養育しています。
保育士、看護師の主な仕事内容
下記は保育士、看護師の主な仕事内容になります。
保育士 … 食事介助、ミルク、おむつ替え、遊び、散歩
看護師 … 薬の管理、医療行為、体調管理、健康管理、感染予防
保育士は、食事介助やミルク、おむつ替え、着替え、遊び、散歩など子どもたちのお世話が主な仕事になります。
また、年齢が上がっていくにつれ、絵本を読んであげることや、生活指導も行っていきます。
看護師の仕事は、障がいや持病のある子どもの薬の管理、処置などの医療行為のほか、子どもたちの体調管理や健康管理、感染予防などです。
長期入所は子供だけではなく保護者のケアも必要
乳児院には、長期間を乳児院で過ごす子どもたちも少なくありません。
長期入所になると、子どもたちは自分の家のように過ごすことになるので、乳児院の職員は親代わりとしての役割も担ってきます。
さらに長期入所になると、子どもの養育だけでなく、保護者に対しての支援や退所後のケアも必要になってきます。
保護者に対する支援内容は、保護者を対象にカウンセリングや心のケアなどを行い、子どもが保護者の元で生活できるように指導していくことです。
子どもの退所後も家庭訪問をしたり、児童養護施設に移動した子どもを訪問したりとアフターケアを行うことも乳児院の重要な役割です。
乳児院の仕事はきつい?
乳児院の仕事内容はきついと言われることがあります。
ここではきついと言われる理由について紹介していと思います。
責任の重さが大きくハードワークになりやすい
乳児院には、さまざまな家庭の事情を抱えた子どもたちが入所しています。
ひどい虐待やネグレクトを受けた子どもや重い障がいを持つ子どもを養育することで、責任の重さに耐えられなくなったり、ハードワークで体を壊してしまったりする人もいます。
忙しさによるストレス
また、人手不足によって子供の対応に追われると、泣き声に耐えられずつい子供に強く当たってしまうということもあるようです。
ただし看護師の場合、乳児院にいる子供たちは必ず病気というわけではないため、病院勤務と比較すると忙しくない可能性が高いです。
保護者や職場内の人間関係の悩み
保護者や職場内での人間関係に悩まされる人も少なくありません。
子どもに愛情を持てない保護者やコミュニケ―ションがうまく取れない保護者などに対して精神的苦痛を感じてしまい、仕事に自信が持てなくなることもあります。
責任の重さや仕事のハードさに釣り合っていない待遇などで辞めたいと思う人も多いです。
家庭との両立が難しい
乳児院は24時間365日体制のため、ほとんどの場合がシフト制で夜勤があります。
特に看護師は配置人数も少ないので、急に休むことができにくく、家庭との両立が難しくなる場合があります。
子どもたちの笑顔や成長がやりがいに
しかし、乳児院では辛い仕事やきついことばかりではありません。
乳児院での仕事は、悲しい経験をした子どもたちを笑顔にしたり、どんどん成長する子どもたちの姿を近くで見ることができたりとやりがいや喜びを感じることができます。
実習を行っている
乳児院では、人材育成のために積極的に実習を受け入れている施設が多いです。
乳児院のお仕事を経験することで、就職前に大変さを知ることができ、覚悟ややりがいを持って仕事に就くことができます。
乳児院の給料とは
乳児院の給料は、それぞれの職種によって違います。
乳児院看護師の給料事情
乳児院での看護師の給料は、夜勤もそれほど多くないので一般病院に比べると低くなる場合が多いそうです。
乳児院看護師
基本給 約20万円~25万円
年収 約400万円~450万円
基本給が20万円~25万円ぐらいで、およそ年収が400万円~450万円と言われています。
さらに夜勤手当などは支給されますが、年収アップを期待しての転職には向いていないでしょう。
乳児院での看護師の仕事はやりがいがあり、人気が高い職種ですが、乳児院の施設数は少なくなかなか空きもできないので求人案件としては少ないです。
乳児院では子どもとの信頼関係を築くため、長期的に安定して働くことができるように正職員で募集することが多いです。
乳児院保育士の給料事情
乳児院での保育士の給料は、他の保育施設に比べると同じくらいかやや高いくらいだそうです。
乳児院保育士
基本給 約18万円~20万円
年収 250万円~300万円以上
基本給が18万円~20万円ぐらいで、およそ年収は250万円~300万円以上と言われています。
乳児院は24時間体制でシフト制のため夜勤があります。
その夜勤手当などが加算されると、手取りはだいぶ高くなるでしょう。
乳児院は地方自治体や社会福祉法人が運営していることが多いので、手当や賞与は比較的安定して支給され、福利厚生などが充実している施設も多く待遇面は恵まれていると言われています。
乳児院のボランティアとは
ボランティアはパートやバイトと違って、無償でのお手伝いになります。
ボランティアの主な内容とは
乳児院には、いくつかのボランティアがあります。
ボランティアの主な仕事
- 掃除
- 庭の手入れ
- 裁縫
- 子供との遊び
- イベント、行事
- 事務作業
掃除をしたり、お庭の手入れを手伝ったり、裁縫したりと特別な資格がなくてもできるボランティアが多いです。
子どものお世話が好きな人には、子どもたちの遊び相手や、赤ちゃんを抱っこをしてあげる抱っこボランティアがあります。
忙しい職員に代わってゆっくりと抱っこしてあげるだけで、子どもたちは喜び、笑顔になります。
ボランティアをしている方も癒され、幸せな気持ちになるでしょう。
イベントや行事などのお手伝いや事務作業などの運営ボランティアもあります。
ボランティアの参加方法とは
ボランティアに参加したい場合は、募集している施設を探しましょう。
WEBで検索したり、施設に問い合わせたりして、募集していれば参加することができます。
高校生や大学生なら、学校を通じて募集している場合があります。
特に福祉系や看護系の学校では、実習として乳児院の仕事を経験することができます。
ボランティア経験者の感想
乳児院でボランティアを経験した人の感想をいくつか紹介します。
「とても大変で肉体的には疲れたが清々しい気持ちになった」
「実際に乳児院に行くことで暗いイメージが明るいイメージに変わった」
「自分にできることが人の役に立ったと実感でき充実した時間が過ごせた」
清々しい、明るい、充実したという前向きな声が多く挙がっているようでした。