准看護師の仕事内容とは?
准看護師の仕事は基本的に看護師が担うものと変わりません。
基本的には看護師と同じ仕事
具体的には下記のような、准看護師も看護師が行うのと同じ業務を行います。
・注射や採血、点滴
・血圧や体温、脈拍の測定
・自力で身の回りのことができない患者の食事や入浴の介助
・夜勤時に病棟内を巡回
・患者が発するナースコールに対応
准看護師が看護師と同じ仕事ができるといっても、「准看護師と看護師の仕事がまったく同じである」といい切ることはできません。
なぜなら、准看護師は先ほど挙げたような仕事を医師や看護師の指示なくして行うことができないからです。
准看護師は医師や看護師をフォローする
准看護師に求められるのは、患者の状態を見極めて自律的に判断したり行動したりすることではなく、自身の看護技術を生かして医師や看護師の仕事をフォローすることなのです。
なお、准看護師の職場には医療機関だけではなく、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの福祉施設も含まれます。
それにともない、勤務する施設によって准看護師が担う仕事も微妙に変わってきます。
しかしどのような施設に勤務するとしても、「准看護師は医師や看護師の指示なしに看護業務が行えない」というルールは変わりません。
准看護師と看護師の違いとは?
准看護師と看護師の根本的な違いは、それぞれの職業に就くために必要な資格の違いです。
資格の違い
看護師になるには、厚生労働大臣が認定する国家試験に合格することが求められます。
しかし、准看護師になるには、各都道府県知事が認定する知事試験に合格することが求められるのです。
必要とされる資格の違いにより、准看護師と看護師それぞれの資格を取得するまでのルートも大きく異なります。
准看護師資格が中学校を卒業したあと最短2年で取得できる一方で、看護師資格を取得するには、高校卒業後に最短でも3年の年月が必要です。
行うことができる業務の違い
准看護師と看護師にはもう1つ違いがあります。
それが先ほど紹介した「看護業務を行う際に医師や看護師の指示を必要とするか否か」の違いです。
看護師が自己判断ですべての看護業務が行えるのに対し、准看護師は医師や看護師の指示がなければ注射や血圧測定などのあらゆる看護業務を行えないのです。
准看護師から看護師を目指す人も多い
准看護師として働く人のなかには、准看護師を1つのステップとして看護師すなわち正看護師を目指す人も多くいます。
准看護師から正看護師になるには、看護専門学校に2年間通ったあと看護師の国家試験に合格することが必要です。
なお、中学校卒業後に准看護学校に通い准看護師資格を取得した人は、准看護師として3年以上の実務経験がないと正看護師になることはできません。
准看護師の給料とは?
「令和元年賃金構造基本統計調査」というものを厚生労働省が発表しています。
それによると、企業規模10人以上の施設に勤める准看護師の平均所定内給与は、月給で約28万円、年収にして約336万円となっています。
平均所定内給与とは、雇用契約書に記載されている始業から終業までの時間から休憩を引いた時間に働いたことでもらえる給与です。
つまり、残業などの時間外の給与は含まないものになります。
これらの金額を手取りに換算すると、月給は21~23万円、年収は252~286万円程度になります。
看護師との給料の比較
同年の看護師の所定内給与が月給約33万円、年収にして約396万円となっています。
これらの金額を手取りに換算すると、月給は24~28万円、年収は297~336万円になります。
それと比較すれば、准看護師の給料は月給で5万円、年収で60万円ほど看護師より安いことがわかるでしょう。
なお両者が年間で受け取る平均ボーナス額は、同統計調査によると准看護師が約64万円、看護師が約81万円となっています。
求人サイトで給料は確認できる
准看護師の給料事情は、求人情報サイトに掲載されている准看護師の求人情報からも垣間見ることが可能です。
ある求人情報サイトが掲載している2020年9月の給料情報によれば、正社員として働く准看護師の平均年収は約355万円で、これを月給に換算すると約30万円となっています。
またアルバイトやパートとして働く准看護師の時給は平均1408円、派遣社員の場合は平均1585円となっています。
准看護師になるには?
准看護師として医療機関や福祉施設で働くには、各都道府県が行っている「准看護師試験」に合格し免許を取得することが必要です。
この准看護師試験を受けるには、所定の教育機関で准看護師になるための専門教育を受け、受験資格を獲得することが求められます。
2つのルート
受験資格を得るためのルートには主に2つの種類があります。
1つ目のルートが、中学校卒業後に准看護師養成所に2年間、もしくは高校の衛生学科に3年間通うというものです。
もう1つのルートが、高校卒業後に准看護師養成所に2年間、もしくは看護大学や短大、専門学校に3~4年間通うというものです。
正看護師になるには高校卒業が必須条件であるため、中学校さえ卒業していれば目指せる准看護師は、その分多くの人に門戸が開かれた資格であるといえるでしょう。
准看護師試験
准看護師養成所や看護大学での課程を修了すると与えられるのが、准看護師試験の受験資格です。
准看護師試験は、全国47都道府県で2月上旬~中旬にかけて行われています。
准看護師試験では下記のような多岐にわたった問題が出題されます。
・人体の仕組みや栄養
・病気の成り立ち
・栄養や薬物などに対する知識
・患者心理や看護と法律
・保健医療の仕組み
なお、准看護師試験の合格率は全国平均で97~98%です。
准看護師は廃止されるの?
結論からいうと、准看護師制度が今すぐに廃止されるということはありません。
看護師不足を補うために生まれた
准看護師という資格は、第2次世界大戦後の看護師不足を補うために生まれました。
短期間で看護技術を身に受け、医療の現場で活躍できる准看護師は重宝されたのです。
高い技術が求められるようになった
しかし、時代の流れにともなって准看護師を取り巻く状況は変わってきました。
医療技術の発展により、看護業務を担う人材により一層高い判断力や技術が求められるようになったのです。
このような流れを受けて、旧厚生省は1996年に開かれた「准看護婦問題調査検討会」において「看護婦養成制度の統合」を提言しました。
(看護婦という表記は1996年当時のものをそのまま記載しています。)
都道府県の行動
一部の都道府県では、実際に看護師養成制度の統合に向けて行動を起こしています。
神奈川県は2013年度から准看護師課程の新規募集を停止しています。
また、福井県や沖縄県では准看護師養成所を看護師課程を学ぶ場所に転換しました。
2016年には、准看護師から看護師への移行を推し進めるため、准看護師が看護師になるための通信制看護専門学校の入学条件が緩和されました。
看護師資格の一本化が望ましいとされている
看護業界が抱える問題点として、看護業務の専門性の高まりや、看護師の地位向上などがあります。
日本看護協会は、その問題点を解決するためには、准看護師を廃止し看護師資格を一本化することが望ましいと主張しています。
2000年には准看護師制度の廃止を求める決起集会を開き、200万人を超える署名を集めたほどです。
すぐに現場からいなくなるわけではない
このように、政府と看護の現場双方から准看護師制度廃止の動きがあることは否定できません。
しかし、だからといってすでに准看護師として働く人の資格が剥奪されたり、一朝一夕に准看護師が医療や福祉の現場からいなくなったりするわけではありません。