時短勤務の法律「育児・介護休業法」とは
時短勤務とは育児や介護などの理由により、もともとフルタイムで勤務していた人が1日の所定労働時間を短くすることができる制度です。
育児・介護休業法の改正により、労働時間を短縮する時短勤務が事業主の義務として厚生労働省により定められています。
時短勤務のルールとは?
事業主によって時短できる時短勤務のルールはそれぞれ異なっており、8時間勤務を6時間勤務に短くしている事業主や保育園への送り迎え時間に合わせて出社時間を遅く、退社時間を早くしている所などがあります。
なお、時短勤務のルールは就業規則にきちんと明記されることになっています。
選択的措置義務 … 子供が3歳になるまでの時短勤務(労働者自身が取得することを選択)
努力義務 … 子供が3歳から小学校入学までの時短勤務(事業主側の任意努力のため罰則なし)
また、育児・介護休業法では子育てをしている人たちの就業継続の支援として、子供が3歳になるまでの時短勤務を「選択的措置義務」、子供が3歳から小学校入学までの時短勤務を事業主の「努力義務」として定めています。
選択的措置義務は事業主ではなく時短勤務を行う労働者自身が取得することを選択することができますが、努力義務は事業主側の任意努力となるため実施されていなくても罰則などはありません。
さらに、国では時短勤務や所定外労働の免除・フレックスタイムの導入・託児施設の設置など「就業しながら子育ての時間確保ができる措置」について小学校3年生終了時まで延長することを推奨しています。
時短勤務を取れるのは正社員だけ?
時短勤務は所定の条件を満たしている3歳までの子供の子育てをしている人であれば、社員だけでなくパートやアルバイト勤務であっても取得することが可能です。
時短勤務の対象外とは
基本的にはフルタイムで働いていた人が対象となるため、もともとの1日の所定労働時間が6時間以下の人は対象外となることが定められています。
対象外
- 1日の所定労働時間が6時間以下の人
- フルタイム勤務でも入社してから1年未満の人
- 1週間の所定労働日数が2日以下の人
- 時短勤務の対象となる期間に育休を取得中の人
さらに、3歳から小学校未就学児の子育てをしている人の時短勤務については法的拘束力がないため、パートやアルバイトだけでなく正社員も勤務先によっては時短勤務ができなくなります。
ただし、法律で小学校未就学児の子供がいる場合は1カ月あたり24時間以上、1年間で150時間以上の時間外労働を行わせてはならないことが定められているので、パートやアルバイトでも規定時間を超える残業を行う必要がありません。
フルタイム勤務であっても入社してから1年未満の人、1週間の所定労働日数が2日以下の人、時短勤務の対象となる期間に育休を取得中の人は正社員・パート・アルバイトの雇用形態に関係なくすべて対象外となります。
また、福利厚生が充実している職場では、小学生(3年生)までの育児、または介護を行っている人や病気休暇を取得した人の慣らし勤務として時短勤務を導入している場合もあります。
育休明け時短勤務のメリットとは
これまで育児をしながら働いている女性の多くが、勤務時間が長い正社員として働くことが負担になり育児休暇明けにパートとして勤務することを選択してたようです。
しかし、時短勤務の義務化により正社員として時短で働くことができるようになりました。
【メリット1】家事や子育ての両立がしやすい
時短勤務を選択することで朝食や夕食の準備などの家事や、子供の送り迎えなどの時間に余裕ができるため子育てなど、両立させやすくなります。
【メリット2】急な子供の病気や怪我にも有休を取らずに対応できる
病気や怪我などによって子供が定期的に通院することになっても、早退したり有休を取得したりすることなく仕事帰りでも診療時間内に病院にいくことが可能です。
時短勤務中の注意点
子育てをする上で時短勤務にはいろいろなメリットがありますが、時短で帰宅するために残った仕事のフォローを同僚にお願いした時には、迷惑をかけているのではないかと不安になったりします。
また、時短で帰ってしまう人の仕事を任されたために、残業することになってしまった同僚はむかつくこともあるかもしれません。
育休や時短勤務で肩身の狭い思いをしないためには、仕事のフォローをお願いした人に対して毎回「ありがとう」とお礼を伝えたり、子供の病気など理由がある時はその旨も説明したりと理解を深めるための努力も必要です。
時短勤務中でも夜勤はするの?
育休明けに職場復帰する時には、事業主側と勤務時間や夜勤についての話をすることになります。
勤務先によっては夜勤も組まれてしまう?
育児・介護休業法では所定労働時間を短くする時短勤務だけでなく、深夜業務の制限も定められているため、事業主は従業員から申請された場合午後10時~午前5時までの深夜勤務を免除しなければなりません。
ただし「事業の正常な運営を妨げる場合」は対象外となるため勤務先によっては人手不足などの理由により、夜勤を行うことを求められたり時短勤務中であっても夜勤だけは通常通りシフトを組まれたりしてしまうことがあります。
また、事業主は深夜に子供の世話ができる16歳以上の同居している家族がいる場合は、深夜勤務免除の対象外とすることができるので、夜勤免除に関して事業主側と自分で交渉することになります。
夜勤が難しい場合は転職も視野に
夜勤を続けることが難しい場合、パートへの雇用形態の変更を求められるケースもありますが、正社員であっても日勤帯だけのクリニックや3歳未満の子供の育児中は深夜勤務を免除している病院、準夜勤だけのシフトとなる病院などもあるので転職を視野にいれるのも一つの方法です。
育休明けにスムーズに仕事に戻るためにも復帰する前に事業主ときちんと相談の場を持ち、時短勤務や夜勤免除についての必要申請書類を提出しておきましょう。
時短勤務の給料は少なくなる?
ほとんどの時短勤務者は短縮された労働時間によって給料が少なくなっているのが現状です。
時短勤務給料のシュミレーション
例えば、これまでの8時間勤務から6時間勤務に変わった場合は給料も25%減少します。
時短勤務での給与の支給額を「基本給(月額)×月の実労働時間(1日の実勤務時間×1カ月の実出勤日数) ÷ 月の所定労働時間(事業主が定めた1日の勤務時間×事業主が定めた1カ月の勤務日数)」でシミュレーションすることができます。
例
「基本給20万円×月の実労働時間(時短勤務6時間×21日)÷月の所定労働時間(通常勤務8時間×21日)」の場合の基本給は15万円です。
就業規則を確認しておくことが大切
また、社会保険料は前年の4月~6月の給与を元に算出され9月に改定されるルールになっているので、復帰のタイミングによっては社会保険料が変わらないため手取り額はさらに少なくなります。
業務内容が変わらないのであれば含む手当などはそのままとなるケースもありますが、業務内容や移動により減給される可能性もあります。
残業手当やボーナスなどの特別賞与も労働時間に比例して少なくなるので、復帰前には手取り額などのシュミレーションを行っておくことも大切です。
また、基本給や手当、特別賞与の減給ルールは就業規則に明記されているので確認するようにしましょう。