助産師の1年目は辛い?
助産師は重い責任が伴うため、大変な仕事であると言われています。
とりわけ助産師になりたての1年目は苦労も多いため「助産師向いてないかもしれない」「本当に疲れた…辞めたい」と思うことも多いようです。
お産が怖い
新人助産師が感じる仕事の辛さとしてよく聞かれるのが「お産が怖い」というものです。
助産師の多くは「赤ちゃんが好き」「子供が好き」という理由でこの職に就きます。
そのため、新人であっても多くの業務を楽しくこなすことができるでしょう。
しかし、そんな助産師でも「お産が怖い」と感じることがあります。
なぜなら、お産は妊婦さんや赤ちゃんの命に関わる業務であり、自らのミスが重大な事態を引き起こす可能性があるからです。
あまりの恐怖心から「お産がなければ良いのに」と考える新人助産師もいます。
忙しすぎて辛い
また、助産師の忙しさも新人助産師が「仕事がしんどい」と感じる理由の1つです。
助産師の仕事は、お産を中心に動いていると言っても過言ではありません。
お産は「忙しいから」という理由でストップするものではないため、場合によってはお産が立て込んで目もくらむような忙しさになることもあります。
特に新人時代はこの忙しさに慣れていないので「忙しすぎてつらい」と感じがちなのです。
仕事がわからない
助産師の仕事に限ったことではありませんが、やはり仕事ができないことは新人が辞めたいと感じる大きな原因となります。
新人助産師には現場で活躍できる知識や技術はまだありません。
毎日わからないことばかりで、さらに先輩から厳しい言葉があると、辞めることを考えてしまいます。
助産師の離職率
このような理由から、助産師1年目であっても助産師を辞めてしまう人もいます。
新人助産師の離職率に関する報告はほとんど見られません。
しかし、新人看護師の離職率は10%を超えると言われているため、新人助産師の離職率もその程度であると考えられます。
▼助産師の仕事内容についての記事はこちら
助産師の辞めたい理由とは?
助産師を辞めたい理由として一般的なのが「仕事ができないから」というものです。
仕事を辞めたくなるような助産師の失敗談は数多くありますが、特にお産の介助がうまくできないと「仕事をやめたい」と感じることが多いようです。
技術や知識不足によるミス
お産の介助には高い技術と豊富な知識が必要とされます。
しかし、新人助産師を含めすべての助産師がこのような要素を不足なく持っているわけではありません。
時には先輩助産師にミスを指摘されて落ち込んだり、志す助産師像にあるまじき介助しかできない自分に腹が立ったりすることもあるでしょう。
そんな時ふと「助産師をやめたい」とか「向いてないのかも」という気持ちになってしまうのです。
不規則な業務
助産師を辞めたくなる理由の2つ目は仕事の忙しさです。
これは1年目の助産師の辛さを紹介した際にも説明しましたが、助産師の忙しさ加減に嫌気がさして辞めたくなる人も多くいます。
お産を中心に回っている助産師の仕事には、どうしても夜勤や残業、突然の休日出勤などが付きものです。
突然の出産に対応するために、オンコールの担当になることもあります。
オンコールの担当になると、夜中でも呼び出しがあれば現場へ向かわなければなりません。
不規則な業務に耐えられず心身ともに疲弊してしまう人は「助産師になるのはやめとけばよかった」と後悔してしまいます。
イメージとの違い
助産師を辞めたくなる背景には、助産師の仕事のネガティブな側面に参ってしまうという理由もあります。
赤ちゃん誕生の瞬間に立ち会える助産師を「ハッピーな仕事」ととらえて志す人も多いでしょう。
しかし、現実はそう甘いものではなく、助産師の仕事にも楽しくない場面が数多くあります。
流産や死産
助産師の楽しくない場面の典型例が流産や死産です。
このような事態に直面してもっともつらい思いをするのは母親です。
しかし、助産師もその母親が抱えてしまった悲しみに正面から向き合わなくてはいけません。
助産師の中には、このような辛い現実を受け止めきれず精神的に参ってしまい、仕事を辞めたいと感じる人もいるのです。
人間関係
人間関係を理由に辞めたいと感じることはどの職業にもありますが、助産師にも多く見られるケースです。
助産師の場合、先ほど説明したような激務の中、妊婦さんと接しなければなりません。
その大変さによるストレスから、同僚や他の医療関係者に対して強く当たってしまう人も多くいるようです。
その他にも、助産師の人間関係のトラブルは下記のように様々です。
- 勤務年数、分娩件数などの経験値の違い
- 看護師が多く、圧力をかけられる
- 妊婦さん・ご家族とうまくいかない
- 医師との関係がうまくいかない
また、助産師は女性にしかなれない職業という現状があります。
女性特有の人間関係のトラブルにストレスを感じ、辞めるしか選択できなくなってしまった人も多くいます。
助産師のやりがいとは?
命を預かる責任とプレッシャーがある助産師にも、この仕事をしているからこそ得られるやりがいが存在します。
新しい命の誕生に立ち会える
ドラマやドキュメンタリー番組の出産シーンや、兄弟姉妹の誕生を経験し、感動したことが助産師を目指すきっかけとなったという人は多いでしょう。
やはり、助産師のやりがいとしてもっとも魅力的なのが、新しい命の誕生をサポートできるという点です。
出産は長い人生の中でそう多くは訪れない一大イベント。
また、生まれてくる赤ちゃんにとっては、これから続く人生のスタートとなる特別な一瞬です。
そんな貴重な時間に立ち会えることが、看護師では味わうことのできない助産師の醍醐味と言えるでしょう。
命の誕生はプレッシャーを凌駕する
お産の介助は業務的にも大変なことが多いうえに、母親と赤ちゃん2人の命を預かるプレッシャーもあります。
しかし、いざ赤ちゃんが誕生するその瞬間を迎えた時の喜びは、苦労やプレッシャーをはるかに凌駕する力を持っているのです。
助産師になってよかったと思える一番のやりがいと言えるでしょう。
妊娠中や出産後の生活指導
お産の介助だけでなく、新米ママに対し母乳指導や沐浴指導などを行い、新生児の育児をサポートできることにやりがいを感じる人もいます。
子育てが初めてという人はたくさんいます。
お産の介助だけでなく、妊娠中の母親のサポートや出産後の生活指導なども助産師に求められることなのです。
助産師は独立できる
看護師と違って独立開業できる点も助産師の魅力の1つと言えるでしょう。
助産師には、看護師には認められていない「開業権」が与えられています。
そのため、助産師として経験を積めば、独立して自分の助産院を開くことも可能なのです。
助産院は総合病院の産科と違って地域密着型の施設です。
したがって助産院の開業は、妊婦さん一人ひとりに向き合いながら仕事をしたい人に向いています。
助産師と看護師はどっちが大変?
助産師を目指すにあたって「助産師と看護師ではどちらがより大変なのか」という疑問を抱く人も多いでしょう。
どちらの仕事にもそれぞれに「辛い」とか「きつい」などと評される仕事はあります。
しかし、助産師と看護師では仕事内容が異なるため、その辛さやきつさの種類も変わってきます。
助産師のつらい仕事
助産師の仕事でもっとも大変なのはやはりお産の介助です。
お産の介助は母親と赤ちゃんの命に直結する業務であるため、些細なミスも許されません。
また、助産師はお産の介助中にどんな事態が発生したとしても、常に冷静でいなくてはなりません。
なぜなら、助産師が不測の事態に動揺してしまうと、お産に臨む妊婦さんを不安にさせてしまう可能性が高いからです。
このように、お産の介助には助産師の仕事特有の大変さが詰まっているのです。
看護師の3K
一方の看護師ですが、看護師の仕事にも苦労がともなうものが多くあります。
看護師の仕事はよく「3K」と評されます。
これは「きつい」「汚い」「危険」の頭文字を取ったもので、看護師の仕事の大変さを表現している言葉です。
きつい仕事
看護師の仕事がきついと言われるのは、体力的にも精神的にも大変な業務が多いからです。
例えば、体力的には移動介助や体位変換で自分より体の大きな人を支えなくてはなりません。
精神的には、重大なインシデントにつながらないよう、常に気を張って仕事をすることが求められます。
汚い仕事
さらに、看護師にはいわゆる「汚い仕事」が付きものです。
助産師にも汚い仕事に分類されるものはありますが、その量は看護師の比ではありません。
看護師として働く以上、患者のおむつ交換や排泄物の処理、鼻汁やたんの吸引など汚いものと接することは避けられないのです。
危険な仕事
看護師には針を誤って刺してしまう事故や感染症にかかるリスクもあるため、危険な仕事であるとも言われています。
給料の違い
助産師と看護師の違いは給料にもあります。
助産師、看護師の年収は下記のようになっています。
- 助産師…約500万円
- 看護師…約480万円
助産師の方が基本給が少し高い傾向にありますが、基本給は同じで助産師手当をつけているという病院もあります。
どちらも比較的生活水準は高い職業ですが、「給料が仕事の量に見合っていない」という声は少なくありません。
給料だけでどっちがいいというのは難しいでしょう。
求人数の違い
看護師は需要が高く、求人数も多くあります。
助産師の場合は専門的な職種となり、看護師ほど多くは募集していません。
しかし、需要は高く、助産師が不足している病院も多くあるため、就職することは難しくはないでしょう。
辞めたいときの対策とは?
助産師の仕事を辞めたいと悩みを抱えたら、まずは辞めたい理由と解決方法について考えてみましょう。
経験が浅いうちは指摘されて当然
1年目など経験が浅いうちは、仕事ができないことを指摘されたり怒られたりすることが多いものです。
このような状態が続くと、ちょっとしたことで仕事を辞めたくなる「仕事辞めたい病」を発症することもあるでしょう。
しかし、これは助産師の仕事に限ったことではありませんが、経験が浅いときは仕事ができなくて当たり前です。
成長につなげること
怒られた際に「新人なんだから仕方ないだろう」と開き直るのはよくありません。
しかし、ある程度は「未熟ゆえに仕事ができない自分」を受け入れてあげることも必要ではないでしょうか。
そのうえで、できないことを1つでも多く解消できるよう、日々の業務を振り返りながら勉強し、成長につなげることが大切なのです。
アドバンス助産師を目指す
また、新人ではない場合ですが、アドバンス助産師の資格を目指すことで問題を解決できる可能性があります。
アドバンス助産師になるには5年の実務経験が必要になるため、1年目の新人で辛いと思っている場合に考えるのは大変でしょう。
しかし、アドバンス助産師の資格を取得することができれば周囲に認められ、自分の自信になるのはもちろん、人間関係が改善されるかもしれません。
助産師長に相談する
助産師の激務に耐えかねて離職を考えている人は、ひとまず助産師長にその旨を相談してみましょう。
場合によっては、仕事量やシフトを調整してくれるかもしれません。
相談しても改善が見込めないのであれば、お産が少ない病院やクリニックへの転職も視野に入れてみてください。
転職することで解決すること
激務に疲れたという場合、職場によって出勤日数などにも違いがあるので解決するという可能性があります。
また、「助産師の仕事は続けたいけど人間関係に悩む」という場合には、職場を変えることで解消することができます。
もちろん必ず良くなるわけではありませんが、ストレスの原因となっている現状の人間関係をリセットすることができます。
辞めることも考える
助産師としてキャリアを重ねてもなお「お産が怖い」と感じる人や、お産の辛い現実に直面し「精神的にしんどい」を感じる人は、助産師を辞めるという選択肢も頭に入れておきましょう。
このような感情が消えない人は、命を預かることによるプレッシャーに押しつぶされている状態にあります。
強いプレッシャーを放置すると、精神的に追い詰められてうつ病と診断されるほどの状態になる恐れがあるのです。
お産に恐怖心や過度の精神的負担を感じる人は、助産師長と相談のうえで助産師を続けるかどうか考えてみてください。