介護老人保健施設の看護師人数は?
介護老人保健施設(老健)などの施設には、人員基準というものがあります。
入所者数に応じて必要な職種や人数が介護保険法によって定められているのです。
老健の人員基準
入所者3人につき常勤の介護士または看護スタッフが1人必要で、その内訳は介護士と看護師の総数のうち、7分の2が看護スタッフであることとなっています。
つまり、100人の入所者がいる施設では、34人の介護・看護スタッフの内9人が看護スタッフということになります。
ちなみに、下記のスタッフも100人の入所者につき1人の配置が必要です。
・医師
・理学・作業・言語療法士のいずれかのリハビリスタッフ
・栄養士
・相談員
・ケアマネジャー
夜勤の人数
夜勤については詳しい定めはありませんが、入所者100人につき介護または看護スタッフ2人以上で行うとされています。
実際には、日勤に看護師が4~5人、夜勤に1人というシフトが多いです。
老健での看護師の役割
老健での看護師の役割は、入所者全体の健康管理と入所者各自に必要な医療的処置をすることです。
健康管理と医療的処置として下記の業務を行います。
・薬の管理
・おむつ交換
・入浴介助と処置
・新規入所者の相談
たくさんの入所者の看護を限られたスタッフで行うためには、介護スタッフだけでなく老健に配置されている医師、リハビリスタッフなどの多職種との協力体制が必須です。
老健看護師の一日
日勤の始まりは、夜勤者からの申し送りです。
利用者の睡眠の状態、体調、食事摂取状況などに大きな変化があったかを細かく聞き取ります。
そして、全員のバイタルチェックと医師から指示が出ている処置内容を確認し、必要に応じて状態に変化のある利用者の報告を行い診察補助をします。
利用者に行う処置
利用者への処置は、排せつ、食事、入浴といった一日の流れの中で、下記のことを介護を行いながらするのが一般的です。
・傷の処置
・軟こう塗布
・点眼
・必要な利用者に毎食後の与薬
・インスリン注射
・バルーン交換
・褥瘡の処置
施設によっては鼻腔栄養や胃ろうの処置を行う場合もあります。
利用者が転倒すれば処置に駆け付け、急変があれば医師と共に処置に入るというとても重要な仕事です。
新規入所者との面談などにも立ち会い、看護面での個別ケアの必要性や注意点などを介護スタッフと共有するといった役割もあります。
夜勤での役割
夜勤では、巡回時に下記のようなことを行います。
・排せつ介助
・体位交換
・夕食後や朝食後の与薬
・急変対応
多くの場合、夜勤の看護師は1人体制で行いますので、医師への連絡や救急隊とのやり取りのために、日ごろの利用者の状態を熟知している必要があります。
老人ホームでの看護師の役割と同様ですが、老健には専属の医師がいるため連携が取りやすく、緊急時の対応がしやすいというメリットがあります。
特養と老健どちらが働きやすい?
様々な介護施設がありますが、特養と老健ではどちらが働きやすいのでしょうか。
それぞれの特徴を紹介していきます。
特養のメリット1 体力的に楽
特養で働くメリットは、病院や老健よりも体力的に楽なことです。
特養は入所の対象が介護3以上と高いのですが、医療処置を必要とする方は少ないです。
特養のメリット2 夜勤がほとんどない
看護師は夜勤に入ることはほとんどなく、オンコールでの対応となります。
夜間に気が抜けないというデメリットはありますが、実際に対応が必要になるのは月に数回です。
特養のメリット3 看護中心の業務
特養の看護師は老健よりも人数の配置が少ないため、介護業務との兼任をあまりせず看護中心の業務をすることができます。
終の棲家で看取りも視野に入れながら、日々の健康を把握し管理することが役割です。
▼特養看護師についての記事はこちら
老健で働くメリット
老健で働くメリットは、利用者の変化する状態に寄り添えることです。
老健は基本、数か月間リハビリを行い自宅に帰ることが目的の施設です。
病院と自宅の間に位置し、具体的に自宅に帰るにはどうしたらよいかという視点で看護にあたります。
特養よりも医療的な処置は多くなりますが、下記のようなうれしい変化を共有できるのは老健ならではのメリットです。
・利用者の状態が回復し処置が減っていく
・処置があっても利用者が自宅に帰ることができる
・利用者が希望する老人ホームに移ることができる
特養と老健は役割が違う
特養と老健は、施設の役割が違います。
そのため、看護師が働きやすい施設がどちらかは一概には言えません。
特養が向いてる人は、小さなお子さんがいる、体力に自信がないといった理由で夜勤が難しい人です。
老健で働くなら、いろいろな利用者に関わって、日々変化のある仕事ができます。
特養と老健のオンコール勤務
老健も特養も、夜勤帯の急変や救急搬送の判断などのためにオンコール体制をとっています。
オンコールとは
夜勤の看護師がいない夜に、現場の介護士では判断できない事由が発生したとき、当番で自宅待機している看護師の直通の携帯やPHSに電話に連絡を入れて指示を仰ぐものです。
当番の看護師は、電話があったら何時であっても対応しなくてはなりません。
入浴中などの理由はありますが、いつ電話がなっても応答できるように常に待機をします。
寝てはいけないわけではないのですが、電話が鳴ったら起きる必要があります。
オンコールの頻度
オンコールの当番は、平均で週に1~2回です。
二人体制でオンコールをする施設の場合はもっと頻度が増えます。
当番の看護師にはオンコール手当が支給され、実際に出動が必要になった場合は別途手当の支給をする施設もあります。
オンコールによるストレス
オンコールの時は自宅にいても常に待機の状態なので、家での過ごし方に飲酒や外出を控えるといった制限が生じます。
また、眠っている間にコールがあるかもしれないと気になってよく寝れない、記録が手元にない状態で利用者の状態の相談にのるのが怖いといったストレスを感じる方も多いです。
ベテラン看護師であってもオンコールの携帯を持ったら、どうかみんな変わりなく明日を迎えますようにとお願いし、朝起きた時に携帯に着信がないことを確認して安心するといいます。
慣れない看護師にはストレスがかかる役目です。
慣れないうちは、ほかの看護スタッフにヘルプの電話をするかもしれないとお願いするなど、ストレスを軽減するような工夫が必要です。
施設看護師の悩み
施設看護師の悩みとして多いのは、看護師なのに介護ばかりをしなくてはいけないことです。
介護をしながら看護業務を行う
日々の排せつ、入浴といった身体介護を行う場面が多くあります。
その合間に看護業務を行うということが日常となっていると、看護師としての仕事にやりがいを見いだせず辞めたいと考えるようになります。
介護を行いながら、ミスが許されない与薬や処置を手早く行うことは大変な負担です。
医療的な判断を任される
現場に医師がいない場合に医療的な判断を任されることも多く、心労を抱え込んでしまうこともあります。
看護と介護の仕事の連携がうまくいかないと、スタッフとの関係がぎくしゃくしてしまい、人間関係の悩みに繋がります。
医療処置が決まっている
病院と違い、入所者の健康管理と決まった医療処置を行うことが役割です。
そのため、看護師としてのスキルアップができないと感じてしまうこともあります。
努力した結果が出にくい
施設の入所者は高齢のため、なかなか状態が回復しなかったり、治療や療養に本人の協力が得にくかったりすることがあります。
一生懸命看護にあたっても、いつも思うような結果が出ない状態だとつらくなってしまいます。
オンコールの手当が少ない
特養看護師では夜勤がないためオンコールが多くなります。
夜勤手当よりもオンコール手当はずっと少なく、夜勤をやっていたころよりも給料が下がりモチベーションの維持がしにくいといった悩みもあります。