介護士の離職率全国ランキング
高齢化社会に向けて、介護士の需要が日に日に高まっています。
厚生労働省は、介護保険制度の施行後に介護士数は大幅に増加し、今後さらに介護士の需要が高まることを見通しています。
しかし、介護業界は他の業界に比べて離職率がやや高い水準で推移していることもわかっているのです。
他の業界よりも賃金が安いこと、非正規職員が多いこと、人手が常に不足しており精神的にも身体的にも負担の大きい仕事だということがよく言われます。
そのため、介護業界は終わってると表現されることも多々あります。
都道府県別の離職率
介護士の離職率については、公益財団法人介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」によって知ることができます。
2019(令和元)年度の調査結果によると、都道府県別で見たときに介護士の離職率が最も高かったのは沖縄県で、正規・非正規職員を合わせた離職率は23.5%に上りました。
日本全体の介護士の離職率平均は15.4%なので、平均よりもずっと高い数値を示しています。
2位以下の離職率は下記のようになっています。
2位は高知県の19.7%、
3位は埼玉県の18.9%
4位は千葉県の18.8%
5位は鳥取県の18.6%
6位が和歌山県の18.0%
7位が東京都の17.9%
8位が大阪府の17.8%
9位が福岡県の17.5%
10位が愛知県の16.5%
離職率が低い都道府県
逆に離職率が低いのは、低い順に5つ挙げてみると下記のような結果になりました。
島根県が9.1%
福井県が9.8%
新潟県が10.0%
石川県が10.3%
富山県が10.5%
日本海側、特に北陸地方では離職率が低い傾向が見られるようです。
介護職の採用率とは
厚生労働省の「職業安定業務統計」によれば、2013〜2018年の介護業界の有効求人倍率の平均は3.9倍でした。
全産業の有効求人倍率の平均が1.61倍なので、介護業界の有効求人倍率は高い水準であり、この数値はさらに上昇を続けています。
有効求人倍率とは
そもそも有効求人倍率とは、公共職業安定所に申し込みのあった求人数を、求職者の人数で割った値です。
この数値が低ければ、求人数に対する求人が少ないことを意味し就職が難しくなるのですが、逆に高い場合は求人に対して求人数が少ないため、人材不足を表します。
介護業界はずっと人手不足が続いているということです。
介護業界の採用率は高い
2020年の有効求人倍率を見ると、全産業の平均は1.44%から1%以下までとどんどん下がっていますが、介護業界ではほぼ4%以上の高い水準で推移しています。
求人を出しても応募してくる人が少ないので、必然的に採用率が上がり、就職試験を受けても受かりやすい、要するに合格率も高くなるでしょう。
これは「売り手市場」と呼ばれ、介護業界で働きたい人にとっては引く手数多であり、より求職者にとって条件の良い職場を探しやすい状況なのです。
介護業界は離職率もやや高い傾向があります。
しかし、働いている職場環境や条件が自分に合わないと感じて離職したとしても、同じ介護業界であればまたすぐに仕事が見つかりやすいということになるでしょう。
介護士の退職理由とは
介護士が退職をするとき、その理由にはどんなものがあるでしょうか。
上司への伝え方として、嘘であっても表向きの理由を言うこともあるでしょう。
しかし、辞めたい理由が施設への批判になってしまっては、トラブルの種になりかねません。
ここではその本音の退職理由を、1位から5位までのランキング形式で紹介しましょう。
1位 給料が少ない
介護業界の収入が、その仕事内容や環境に対して低いことはよく知られています。
実家暮らしでなければ生活できない、いずれは結婚して子供を持ちたい、などと考えている人にとっては切実な問題となってしまいます。
2位 施設の利用者とのトラブル
介護士は人手不足のため、利用者やその家族が希望した通りの介護サービスを提供できないことがあります。
また、希望通りのサービスを提供したつもりでもクレームをする人はいるでしょう。
そのため、介護士が一生懸命仕事をしていても、トラブルの起こる要因はあると言えます。
3位 職場の人間関係
介護は重労働なので、職員同士がフォローし合う必要があります。
しかし、職場の全員が協力しあって仲良く仕事ができることは少ないと言えるでしょう。
4位 施設の運営方針と合わない
介護士も一人ひとりがそれぞれにポリシーや誇りを持って仕事をしているものです。
そのポリシーや誇りが施設の運営方針が合わないのでは働くことが苦痛になることもあるかもしれません。
そうならないためにも、面接などで自分に合った職場であることを確認し、職場を慎重に選ぶ必要があります。
5位 家庭との両立が難しい
これは介護士の多くが女性であることに関連しています。
シフト制である職場では、結婚して家事を担当していたり、子供の病気や学校行事などがあったりすると、急な変更にはなかなか対応できないことも多いでしょう。
それが家庭と仕事との両立が難しいという理由につながるのです。
介護職離職が多い原因
介護士の離職率は全産業平均に対して、極端に低いわけではありませんがやや高めの傾向があります。
なぜ離職が多くなってしまうのでしょう。
介護士の離職者のうち勤続3年未満であった人は全体の約6割強、半年など、1年未満であった人は38.2%にも上ります。
介護士の離職率が高くなってしまうのは、この勤続年数の短さが大きな要因のようです。
職場での人間関係
勤続年数が短くなる原因は、退職理由とも重複する部分ではありますが、男女ともに職場での人間関係の問題が大きくなっています。
職場での新人いじめなども後を絶たず、離職すればとりあえずは「辞めてよかった」ということになってしまうのです。
賃金・福利厚生
男女別では、男性では収入が少ないため将来の見通しが立たない、女性では結婚・妊娠・出産・育児のため、という人が多いのです。
介護士が今の職場で働き続けたいとは思っていても、収入が少なく、環境が整わないため職場復帰の目処が立たないのです。
賃金面や福利厚生、研修制度、子育て支援などの整備が進めば、介護士たちは離職せずに済む可能性もあるかもしれません。
理念や方針など
意外と大きいのは、介護士が介護施設の理念や運営方針、経営の健全性などに魅力を感じて就職しているケースが少ない、ということです。
これは介護施設の運営者が今後取り組んでいくべき問題となっています。
また、職場での不満を相談できる窓口が少ないことも、介護士がすぐに離職してしまう原因を作ってしまっているようです。
介護職離職率ゼロの対策とは
厚生労働省では、介護職に就く人々の処遇を改善して離職を防ぐためにも、2019年介護人材確保対策が施行されています。
これまでもいろいろと取り組みはされてきました。
しかし、団塊の世代が全て65歳以上になる2015年、そして団塊ジュニアが全て65歳以上になる2040年に向け、さらにその対策が急がれているのです。
特に2025年以降は高齢者の急増ではなく、現役世代の急減という局面が待っています。
離職を防ぐ対策
介護職員の処遇改善のほか、下記のような多角的な対策が講じられています。
・多様な人材の確保・育成
・離職防止・定着促進・生産性向上
・介護職の魅力向上
・外国人材の受け入れ環境整備
離職率を下げるための対策としては、何よりも他の産業と比べて遜色のない賃金に引き上げることに力を入れる必要があります。
賃上げ処遇改善に加え、経験・技能のある職員や、勤続年数10年以上の職員にはさらに重点を置いて処遇改善を進めています。
ニーズに合わせた復職支援
子育てや介護などで止むを得ず離職している人材の復職支援として、福祉人材センターに離職者情報を把握するための届け出データベースの構築が進められています。
これにより、求人情報の提供、研修の開催案内など、一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかな復職支援が行えるということです。
さすがに離職率ゼロとは無理なことかもしれません。
しかし、介護職員の待遇が良くなり、さまざまなライフイベントに対応しながら、それでも仕事を続けていけるような体制が整うことが望まれます。