寄り添う看護とは?
看護師としてどのような考え方を持って仕事に取り組んでいくべきかと考えたときに、寄り添うとは?という疑問が出てくることがあるでしょう。
看護理論でも寄り添う看護というキーワードがよく出てくるようになり、看護師にも本質的な理解が求められるようになっています。
寄り添う看護とは、患者の視点で何が必要かを考えてケアをすることです。
個別性の高い看護
従来の医療は医師や看護師、薬剤師などが中心になって均質的な治療や看護を提供するのが基本でした。
しかし、病人を物のようにして扱ってしまい、心から満足できる医療サービスを受けられていないケースがしばしばあったのも確かです。
その状況から脱却し、患者から最も距離が近くて心を打ち明けられる医療スタッフとして看護師がまずは率先して患者の心を開くべきというのが基本的な考え方になっています。
それによって本当に満足できる医療サービスを提供できるようになり、医療スタッフも患者も喜べる関係が作り上げられるのが魅力です。
つまり、本質的には寄り添う看護とは個別性の高い看護を行うことを意味していて、個別医療の考え方に則ったものになっています。
現代医療では最も患者から求められている要素とも言えるでしょう。
寄り添う看護の効果とは?
寄り添う看護は、患者も家族も看護師も満足できる医療を実現できる可能性を秘めているのが魅力ではあるものの、具体的に看護にどのような効果があるのでしょうか。
寄り添う看護のアプローチを具体的に考えてみるとわかりやすいでしょう。
タッチングとは
寄り添う看護の代表的なスキルとして知られるようになってきたのがタッチングです。
タッチングとはそっと患者の手を握ったり、背中や肩をさすったりすることを指します。
タッチングには、下記のような効果があることが特徴です。
・患者が痛みに苦しんでいるときにさすることで痛みが緩和される
・患者の胸が苦しいときに軽く背中を叩くと落ち着いたり安心感に繋がる
さする以外にも揉む、なでるといったやり方に加え、手を当てるだけの動作もあります。
タッチングの効果
タッチングの基本は患者が安心感を得られることです。
病気で苦しんでいて、さらに家族ともたまにしか会えない状況になっていると心から病んできてしまうことは否めません。
そこに寄り添って心からケアをしてくれる看護師がいるという実感があるだけで安心感を得られます。
痛みや苦しみの原因が心に由来するものだったときには大きな効果を発揮し、瞬く間に状態が改善することもあるのがタッチングです。
このような形で患者の心理的ケアを期待できるのが寄り添う看護なのです。
タッチングのポイントとは?
看護師としてはタッチングのやり方を理解しておくのはとても重要で、寄り添う看護を行っていく上での基礎になります。
タッチングのポイントは手を当てる、さする、軽く叩くなどといった細かなテクニックよりも心を通わせるのを重視することです。
患者とのコミュニケーション
患者との信頼関係があることがタッチングの効果が現れる大前提になります。
普段からコミュニケーションを密に取るように心がけましょう。
また、タッチングをするときには患者に声をかけてから行うのがポイントです。
背中を叩きましょうかなどと一声かけて承諾を得てから行うようにすると失礼がありません。
患者によっては特に聞かずにすっと手を伸ばした方が良い場合もあるので、普段のコミュニケーションからその様子を見極めましょう。
タッチングに類似するもの
タッチングはタクティールケアとも類似しています。
タクティールケアとはスウェーデン発祥の手で触れることによるケア方法で、タッチングの原型とも言えるものです。
また、セラピーにも類似した手法があり、リラクゼーション効果があることが知られています。
このように手で触れる力は人に安心を与えることができる魅力的なものです。
看護師としてはしっかりと習得しておきたいスキルと言えるでしょう。
寄り添う看護の看護観とは?
寄り添う看護の看護観とは結局どのようなものなのかがわからずに悩んでいる人もいるでしょう。
ベテランになってもどういう看護観なのかがはっきりと理解できていないこともあるので無理はありません。
寄り添う看護は個別性が高いので、これがベストという看護のあり方を定義付けできるものではないのが特徴です。
寄り添う看護の個別性
急性期の患者と回復期の患者では医療や看護に対して求めているものが違います。
【急性期】
今のつらさや苦しみを取り除いて欲しい
【回復期】
一日でも早く元通りの生活を送れるようになりたい
【慢性期】
自分らしく納得をしながら生活の質の向上を目指したい
急性期の患者には今のつらさを何とかして取り除いて欲しいというのが最も大きな願いでしょう。
それに対して回復期の場合には一日でも早く元通りの生活を送れるようにしたいという気持ちを湧き起こるようにサポートするのが大切になります。
慢性期ならまた対応が異なり、QOLの向上を重視した看護を求めているケースが多いでしょう。
看護観の原則
ヘンダーソンは看護について、健康か不健康に関係なく、患者の健康の維持や回復に役立つ諸活動という見解を示しています。
教科書でもよく出てくる看護観の原則です。
この考え方に基づいて考えてみるとわかりやすいでしょう。
患者の状況によって何を求めているかが違うので、その違いに合わせて柔軟に看護の仕方を考えて対応することが寄り添う看護の看護観なのです。
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面接で聞かれる看護観の受け答えとは?
面接ではかなりの確率で看護観に関する質問があります。
どのような考え方で看護をしていこうとしているのかを知るために看護観の説明が求められるのが通例です。
具体的な例を挙げる
新卒採用でも中途採用でも「あなたの看護観を説明して下さい。」という率直で自由度が高い質問は多いので、具体例を挙げながら説明できるようにしておきましょう。
典型例として寄り添う看護を挙げて、自分なりの言葉で説明するのは賢い対応方法です。
看護観についての例文とは
下記のように、寄り添う看護についての具体例を挙げ、自分の言葉で自分の看護観を説明するというのが、質問への典型的な答え方でしょう。
【例文】
「私はよく言われる寄り添う看護をするのをモットーとしていきたいと考えています。
患者様と一緒に歩むという気持ちで二人三脚で個々の患者様の気持ちを聞きながら、本当に求められている看護をしていきたいです。」
中途採用の場合には「このようなインシデントがあったときにあなたはどう対応しますか」という形で、看護観に基づく対応の方法を具体的に説明することが求められる場合もあります。
逆質問への対策をする
また、「あなたから何か質問がありますか?」などといった逆質問への対策もしておきましょう。
もし看護観の質問がなかったなら、
【例文】
「こちらの病院ではどのような看護観を重視していらっしゃいますか。」
という質問をして回答を聞くことができます。
福利厚生や休みのことなどは、相手から説明がない場合は確認してもいいですが、逆質問はそれだけで終わらず、自分の看護観も話してアピールの機会を作るのも良い方法です。
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